本年度は次の4つの主テーマについて検討した。 第一には、子ども主体の対話型授業実践過程や教師の熟達化水準を可視化し、問題点を客観的に評価する分析手法の開発を試み、子どもー教師ー子どもの三項関係の発話連鎖が重要な指標となることを明らかにした。 第二には、教師の熟達化水準の変化過程を縦断的に分析し、自己の従来の実践枠組みにたいする思い込み(「有能性の罠」)からの脱却のためには、他者の目を通した批判的吟味による研修の場にさらけ出す勇気と前向きな学びの姿勢が重要であることを明らかにした。 第三には、子ども主体の対話型授業の中では、子どもの批判的思考や問題点を明らかにする認知的側面のみでなく、他者が発言できなかったり説明に困難を抱えているときに、その心の葛藤を自分のこととして感じ取り、発言が生まれるまでしっかりと待つ姿勢や、何らかの手助けを差し伸べるという、共感性や思いやりの心が育まれることを縦断的研究の中で明らかにした。 第四には、子ども主体の学びあう授業実践の中での、子ども達の認知的側面や情動的側面の変化過程と、教師の諸観(子ども観、授業観、知識観など)との間には密接な関係があることが分かった。
|