研究課題/領域番号 |
23330211
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 眞一 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40196241)
|
研究分担者 |
権藤 恭之 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40250196)
平井 啓 大阪大学, 大型教育研究プロジェクト支援室, 講師 (70294014)
中原 純 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (20547004)
|
キーワード | 臨床心理学 / 高齢者 / 孤立 / 孤独 / 心理学的介入 |
研究概要 |
当該年度は4つの研究班が以下の研究を実施した。いずれも次年度以降に成果を確定し,順次発表する予定である。 分担研究(1)佐藤班 研究1:「高齢者に対する潜在的態度と社会規範の関連性」 米国ワイオミング大学との共同研究として進め,潜在的養護者として位置づけた大学生を対象に行った調査によって若年者と高齢者に対する顕在的態度尺度,虐待観尺度を作成し,潜在的連想テスト(IAT)との関連性を検討した。 研究2:「孤食の行動学的背景:人の生涯プロセスにおける食生活スタイルと孤独感」 孤独感は社会的孤立者ではない者にも認められることから,高齢者教室参加者を対象に食生活スタイルを中心とする質問紙調査を行った。 分担研究(2)中原班 「高齢者の社会的ネットワークの変化プロセスと孤独感の関連性」 独居高齢者20名を対象に半構造化面接を実施し,独居に至った経緯,独居生活における困難を面接調査によって聞き取り,同時に抑うつ状態を測定した。 分担研究(3)権藤班 「孤独感を抑制する心理的要因の発達の検討」 孤独感を低減させる対処法を測定する尺度として,補償を伴う選択的最適化(SOC)と加齢に伴う精神的発達指標である老年的超越尺度の2つの尺度を作成し,インターネット調査を実施した。 分担研究(4)平井班 「身体疾患を持った高齢者の孤独・孤立に対する介入方法の開発(実践)」 慢性疾患患者のソーシャル・サポート・ネットワークの形成プロセスに影響を与える要因を明らかにするために,がん患者を対象としたグループ療法プログラムを実施し,一部の参加者に面接調査を実施した。その結果,がんに関連する心配事について話し共感し合えることや,他の参加者の考え方や心配事への対処法を知ることができることが患者にとっての重要な要因であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担を行った各班の研究実施状況はおおむね順調で,本年度中に予定していた実験,調査,面接調査,プログラム実践を行うことができた。ただし,予定していた一部の対象者を確保できない研究班もあったので,次年度以降に実施できるよう努力したい。また,佐藤班と平井班では,研究内容に関する総説およびオリジナル論文を公刊できた。また,両班では研究成果の一部を学会にて発表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,各研究班ともこれまでの成果によって作成された尺度や得られた独居者および身体疾患患者に関する知見に基づいて,地域在住の高齢者や障害者の孤立と孤独について調査・面接等を実施する予定である。また,当該年度の研究から,孤立・孤独の問題は,独居高齢者や身体障害者に限らず,軽度認知障害者(MCI)や軽度認知症患者とその家族の社会的孤立と心理的孤独感への対応は,今後の超高齢社会の進展に伴ってますます重要な課題になることが明らかになったので,今後の研究課題として,新たに地域の見守りの在り方を含めた予備的研究を開始する予定である。ただし,地域での個別データの取得は,個人情報の問題もあるため,研究には困難が予想される。研究を実現するためには,地域の社会福祉事業団や社会福祉協議会と連携して研究を進めることが重要と考えられるので,これら事業者との関係づくりも今後の課題となっているが,既にその可能性は確認済みである。
|