研究課題/領域番号 |
23330214
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
石口 彰 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10184508)
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研究分担者 |
薬師神 玲子 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (30302441)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 実験心理学 / 分散識別 / 熟達化 / リスク判断 / 意思決定 |
研究概要 |
本研究の目的は、実験的に操作可能な制御不能イベントを設定し、その下で、①制御不能イベントの検出や制御不能判断等の認知特性、②制御不能イベントの原因帰属で行われる因果推論、③制御不能イベントの認知や因果推論に課題や作業への熟達化がどのように影響するか、④制御不能イベントとリスク認知との関係、等を明らかにすることである。この目的を達成するために、25年度は、「制御不能イベント」に関する研究セミナーを開催するとともに、以下のような「既成の制御可能なシステムで制御不能イベントが発生する」状況における熟達化と意思決定の問題を、心理実験とシミュレーションを用いて検討した。 ①操作-応答ノイズ分散識別の熟達化と意思決定 キーボード操作とそれに対するコンピュータの応答に関して、通常状態の「システム固有ノイズ」と制御不能状態の「システム障害ノイズ」の識別能力の熟達化が、障害を察知してリスクを回避するか否かの意思決定に及ぼす影響を検討した。その結果、分散識別能力は、リスク回避判断時のノイズSDの平均と標準偏差には影響を及ぼすが、リスク回避判断課題の得点やリスク回避判断課題での回避失敗回数には効果を持たないことがわかった。 ②出力系としての視覚刺激特性の分散識別精度とリスク判断の最適化 画像に含まれるノイズの識別精度の熟達化と、画像提示システムの障害の判断を基盤としたリスク判断課題との関係を検討した。その結果、分散識別学習はリスク判断課題のノイズ識別や判断基準に影響するが、リスク判断に伴うコストには影響せず、①の応答系との共通性が見いだされた。 また、24年度の成果等を、7月のCognitive Science Societyの年次大会(2件)、9月の日本心理学会大会(1件)、11月のPsychonomic Societyの年次大会(1件)、12月の基礎心理学会大会(2件)等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度研究計画のうち、研究セミナー及び既成の制御可能なシステムで制御不能イベントが発生する状況における認知特性(分散識別能力の測定)とその熟達化過程、さらにリスク判断を含む意思決定との関連性に関して、多くの実験的検討を行うことができた。この中で、分散識別能力と最適な意思決定との関連性と明らかにしたことは、意義あることである。さらに、24年度の成果を国内外の学術集会で発表し、報告書も作成した。一方、当初の目的のうち、聴覚モダリティに関する出力系の実験が完了しなかったこと、さらに、意思決定課題遂行のベイズモデルの構築が未完成であったことから、「おおむね順調」という評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に則り、様々なモダリティにおける分散識別と意思決定課題、因果推定課題を設け、制御不能状況における熟達者と初心者の認知行動の差異、最適な意思決定との関連性の詳細を検討し、ベイズ推論の手法を用いて、モデル化を進める。 また、本研究を通して、ばらつき認知(分散認知)に関するクロスモーダルな共通メカニズムの可能性が示唆されたことを踏まえて、クロスモーダルな分散認知の熟達化とリスク認知との関連性を追求していくことを予定している。
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