研究課題/領域番号 |
23330215
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
下野 孝一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70202116)
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キーワード | 空間定位 / 両眼立体視 / 方向判断原点 / 視方向原理 / ポインティング / 単眼刺激 |
研究概要 |
本年度は単眼刺激の視方向原理の逸脱現象を、両眼立体視空間を使って調べた。水平網膜像差をもち、垂直位置の等しい線分刺激をランダムドットステレオグラム(RDS)上に提示し、それらを見上げたり、見下げたりしたとき、その線分は相対的にずれてみえる。このずれは視方向の原理から逸脱したものであり、なぜそのような現象が生じるのかを特定することは、原理の精緻化という意味で興味深い。 本年度はまた、両眼立体視に関して2つの歴史的研究を行った。1つは両眼立体視空間の知覚が通常の個人とは異なる立体視アノマリーの知覚特性に関するもので、もう1つは3次元テレビの見え方に関するものである。前者は心理学評論へ、後者はIEEEに投稿し出版された。前者の研究の結果、立体視アノマリーの視方向研究はほとんど研究されていないことがわかった。弱視や斜視の観察者の両眼融合過程と単眼刺激の視方向原理との関係は今後の研究課題である。後者の研究の結果、3次元テレビの見え方に関しては、疲労、臨場感などに改善の余地があることがわかった。両眼立体視に関しては、立体透明視刺激を使い見かけの奥行量に関する実験を行った。その結果はProceeding of SPIEに発表した。 さらに本年度は、ポインティング行動に視方向原点と触運動原点の両方が寄与しているという2重原点仮説を2次元空間で調べた。その結果はPerceptionに投稿し出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は博士研究員の雇用が遅れたために、単眼視方向原理に関する実験計画に遅れが生じた。博士研究員にはプログラムと実験を期待してために、雇用の遅れが実験計画に影響を及ぼした。しかしながら単眼視方向原理を測定する両眼立体視空間の特性に関して歴史的研究と実験的研究を行い、実績を挙げることができた。歴史的研究は、立体視アノマリー及び3次元テレビ観察時の人間の見え方に関する文献的研究である。それぞれ論文が公刊された。実験的研究は幾何学的予測と見かけの奥行量との関係を測定したものである。この結果は国際会議で発表した。 以上のように、今年度の実験計画に関してのみを考えると研究はやや遅れていると評価せざるを得ないが、達成度を研究総体としては考えると比較的順調である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は単眼視方向の逸脱現象の実験をさらに加える。本年度と異なり、来年度は頭部位置を変更するのではなく、刺激は前額平行面、正中面付近に置きながら shear disparity を操作し、刺激が提示される面(両眼立体視刺激)に傾きを導入する。また統制条件として両眼刺激の視方向についても測定する。これらの実験結果は国際会議(VSS)に発表し、Vision Rearch及びPerceptionに投稿予定である。 さらに来年度の後半には3次元空間でのポインティングに関して、2重原点仮説について研究する。被験者の課題は光点を明室、暗室の両条件で光点の視方向を指さすことである。この視方向が、事前に測定しておいた、視方向原点および触方向原点の原点位置によって説明できるかを検討する。
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