研究課題/領域番号 |
23330239
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松塚 ゆかり 一橋大学, 大学教育研究開発センター, 教授 (80432061)
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キーワード | 教育経済学 / 高等教育改革 / モビリティー / ボローニャプロセス / ブレインゲイン(ドレイン) / 人的資本政策 / チューニング |
研究概要 |
本研究は、高等教育改革、人材流動、ブレインゲインの相互作用を定量・定性両面の検証により明らかにするものである。平成23年度はボローニャ・プロセスが進行するEUを対象にマクロデータを用いて教育改革と学生・研究者のモビリティーとの関係を明らかにした後、EU主要国において機関調査を実施し、モビリティーに作用する組織的要因について検証を行った。 具体的には、OECD,EU,UNESCOが提供する公開データ並びに販売データを使用してEU域内学生・研究者の流動の実態とそれを規定する経済的、機関的要因を分析した。これにより、経済力を有する地域、質保証等の教育改革に積極的な地域はより多くの学生や研究者を受け入れている傾向にあることが確認された。次いで、定量分析で明らかになった大学間および分野間の流動バランスを指標に、過剰・過小流動が見られる大学を抽出し、地域分散を考慮して3か国、6大学を調査対象国・機関として選択、研究チームが現地を訪問して大学の執行部、国際関係部門、一般教員、学生を対象に聞き取り調査を行った。さらに、各国のEU代表部及び当該分野の専門家を訪問し、政策過程とその浸透状況についてヒアリングを行った。現地調査においては、定量分析では解明できない課題、教育現場における組織特有の運営・管理、教育・研究環境に焦点をあて、ボローニャ・プロセスの導入経緯、浸透度、障害の有無等を調査し、それらが流動性に与える影響を検討した。収集したデータは定性分析ソフトQSR-NVivoに集積し、現在分析に備えてデータ加工の途上にある。 研究会を3回開催し研究成果の共有と計画の確認を行った。スカイプを用いて国外の研究協力者とも定期的に打合せを行い、研究方法の打合せや成果の共有を行っている。また11月には米国の「Association for the Study of Higher Education」においてそれまでの研究成果を発表した。順次論文の投稿も開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の研究活動のコアは、(1)マクロデータの定量分析、(2)欧州訪問調査のための機関抽出及び調査プロトコールの作成、(3)欧州調査の実施であったが、これら全てについて計画通り進展した。また24年度に計画している米国調査及び研究者の招聘、定性データの分析についても23年度中に準備を進め、24年度に向けても順調な展開にある。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は米国および中国の高等教育改革と高度人材流動との関係に焦点をあてて、両国の研究協力者及び日本の連携研究者と協働で研究を推進する。最終年度の25年度には日本における人材流動の状況を精査したうえで、全収集データを総合的に分析する。これらの成果は、各年3回の研究会、海外識者を招聘する国際会議、国内外での学会発表、報告書と論文発表を通して、研究チーム全員が公開する。
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