研究課題/領域番号 |
23330239
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松塚 ゆかり 一橋大学, 大学教育研究開発センター, 教授 (80432061)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 教育経済学 / 高等教育改革 / モビリティー / ボローニャプロセス / ブレインゲイン(ドレイン) / 人的資本政策 / チューニング |
研究概要 |
本研究は、高等教育改革、人材流動、ブレインゲインの相互作用を定量・定性両面の検証により明らかにすることを目的としている。平成23年度は欧州(イギリスとフランス)を調査し、平成24年度にはポーランドを加えて、高等教育政策と学生のモビリティー、特にインとアウトのバランスについて検証を行った。分析の途上、モビリティーに作用する要因は複雑かつ多様であることを重視し、政策・制度的要因に焦点をあてつつも、地域環境、経済及び財政、そして歴史的要因等を多面的に検討した。さらに、調査対象地域を北米と中国に移し欧州調査と一環した枠組みで機関調査を実施して国際比較分析に備えた。具体的には、①平成23~24年度に収集したデータをQSR-NVivoを用いて分析し、フローバランスに影響を与える複数の要因を定義した分析モデルを提示し、②フローバランスを被説明変数にしてモビリティーの規定要因を多面的に検討した結果、ボローニャ政策やチューニング等の流動化政策・活動は確実に効果を増す傾向にあることを明らかにし、③一方、それら政策や活動は同一の名称で実践されていても(例えばチューニング)、国や地域によってその意義と目的及び効果は多様であり、たとえば欧州は就職力と流動性の向上を企図し、米国は2年制大学から4年制大学への移行を主目的とするなど、大学を囲む諸条件によって制度使用のあり方とそのインパクトは一定ではないことがわかった。これらの研究成果は、全米高等教育学会でのシンポジウム、欧州チューニング世界大会、日本におけるチューニング国際フォーラム等を通して広く共有されている。平成24年度の終盤には中国の大学及び政府機関で機関調査を実施するとともに、当該分野の専門家と共同研究を進める準備を行い、平成25年度の全調査地域を対象とした包括的分析と比較研究、特にスキル(ブレイン)流動の経済的意味合いを検討する準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査やヒアリングは順調に進展し、収集したデータや情報は質量ともに十分である。研究会やシンポジウムについても、全米高等教育学会ではピアレビューを通りシンポジウムを開催し、多くの貴重な質問やコメントを得た。日本でのチューニング国際シンポジウム及びチューニングとIRの講習会もこれまでの研究成果を発表する貴重な機会となった。一方膨大なデータを全て消化したとは言えず、平成25年度はこれまでの調査で得られた情報と知見を十分に分析し、本事業の目的である、高等教育改革、人材流動、ブレインゲインの相互作用を定量・定性両面で明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、①日本のボローニャ諸計画への参画度の検証、②全調査の総括分析、③アジア高等教育圏への応用性の検討、④テューンニングのプロトタイプ作成、⑤研究成果の発表(出版)を行う。引き続き国内外の専門家と協働体制をとり、以下の連携研究者(①,②、③)及び研究協力者(④、⑤)と研究を推進する。 ①大場淳(広島大学・高等教育研究開発センター(欧州及びアメリカ調査の収集データの分析、発表、報告書の作成を担当。②深堀聡子(国立教育政策研究所):アメリカおよび日本の調査分析、チューニング等の研究と報告書の作成を担当。③苑復傑(放送大学):中国調査、収集データの分析、発表、報告書の作成を担当。④北川文美(University of Bristol, UK):欧州調査について取集データの分析及び報告書の作成を担当。⑤Clifford Adelman (Institute for Higher Education Policy, USA)アメリカ調査、収集データの分析、米国データと国際データを併せた計量的考察、報告書の作成を担当。
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