本研究の目的は、学生及び研究者の流動性拡大と単位・学位の互換性強化を軸に、EU経済政策の一翼を担うボローニャ・プロセスに焦点をあて、高等教育改革、人材流動、ブレインゲインの相互作用を定量・定性両面の検証により明らかにすることであった。また、同改革がアメリカ及びアジアに急速に拡大していることに注目し、米国と中国の参画状況と政策的含意を調査した上で、日本への波及性を検討することも課題であった。アジア高等教育圏構想が議論される日本において、なぜ研究者・学生の流動性が高まらないのか、なぜ日本の大学の国際評価は下降傾向にあるのか、国際的流動化計画との調和と競合のバランスをいかに確保するのか、などの問いに対する一定の解を見出すことが目指された。これらの課題に取り組むために最終年度の平成25年度には以下を行った。 (1) ボローニャ計画の日本におけるインパクトを、特に学位や単位の国際通用性を高める「チューニング」に焦点をあてて行った。 (2) 欧・米・中・日の調査から得られたデータを包括的に検討し、高等教育の流動性に作用する要因として、留学奨励や教育互換制度の向上など教育面での制度改革のみならず、地域経済力、自然環境、歴史的経緯などについても総合的に考察した。 (3) チューニングについて、日本と中国を中心としたアジア高等教育圏への応用性を検討するとともに、地域的競合性について検討を行った。 (4) 分野特定型と異分野融合型それぞれについてチューニングモデルを作成し、その適用性を検討した。 これらの成果は、海外専門家を招聘しての国際シンポジウム、国際交流研究会、招待講演、出版物を通して発表・共有したが、研究期間を通した包括的な成果は国内外の連携研究者との共同執筆により「グローバル化の中の高等教育―人材流動化時代の大学への期待」として平成26年度中に出版される。
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