1 具体的内容 本研究課題は「旧外地にはどれほどの学校があり、戦前から戦後へ旧外地における学校教育の連続・非連続を明らかにする」ことである。本年はその後半部分の課題について取り組み、年度末に『旧外地の学校に関する研究―1945年を境とする連続・非連続―』を主題とする研究成果報告書を刊行した。報告書中、台湾公学校の唱歌を通して連続性についてふれ、その一方朝鮮済州島の初等学校を事例にし、各校の多様な設立事情を日本中心の教育史観で考察することの危うさを指摘した。また占領期シンガポールの青年教育機関や、旧南洋群島米軍収容所内の教育活動の論考を通し、台湾・朝鮮・満洲に偏りがちな植民地占領地教育史研究の裾野の広さを示した。後半部分第2の課題で、戦後開校した旧外地日本人学校について明らかにした。日本人学校については満洲主要都市に開校されたことを広汎な資料から指摘し、個別に大連日僑学校・台湾の高雄日本人中学校・朝鮮の平壌日本人学校を取り上げた。 2.意義 旧外地学校教育の戦前から戦後への「連続・非連続」の解明については、前年度報告書別冊『外地学校一覧』で一部明らかにした学校施設の連続だけではなく学校運営・学校行事・各教科内容等、取り組むべき視点が多々あることを各論考から明らかにした。外地日本人学校については、従来知られることが少なかったが、その存在を立証し今後につながる調査研究の方向性を示すことができた。 3.重要性 教育は国家体制の変化が生じても途絶えることなく続けられている。戦後の体制転換による教育の連続非連続を捉えることは、新国家の教育への主体性のありようを語る視点でもあった。学校運営・学校行事・各教科内容等、「連続・非連続」について重層的に考察することによって、植民地解放後の新国家の教育が捉えられることが明らかになった。
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