研究課題/領域番号 |
23330247
|
研究機関 | 國學院大學北海道短期大学部 |
研究代表者 |
野崎 剛毅 國學院大學北海道短期大学部, 幼児・児童教育学科, 准教授 (50412911)
|
研究分担者 |
小内 純子 札幌学院大学, 社会情報学部, 教授 (80202000)
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
新藤 こずえ 立正大学, 社会福祉学部, 講師 (90433391)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | スウェーデンサーミ学校の実態 / スウェーデンサーミ議会の活動 |
研究概要 |
本研究の目的は、わが国の先住民族であるアイヌ民族の教育保障に関わる問題を、先住民族の権利保障について先進的な取り組みをおこなっているスウェーデンとの比較により明らかにするすることである。この目的の達成のため、平成24年度は主にスウェーデンにおいて聞き取り調査と配布調査をおこなった。おこなった調査は次のとおりである。①サーミ住民調査、②サーミ学校教員調査、③サーミ学校保護者調査、④サーミ工芸学校教員調査、⑤サーミ工芸学校学生調査である。すべての調査においてサーミ1~5人に聞き取り調査をおこなったほか、②③④⑤についてはスウェーデン語の自記式調査票を用いたアンケート調査もおこなっている。アンケート調査は学校を通して対象者へ調査票を配布し、後にスウェーデン在住の調査協力者のもとへ郵送してもらい、それをまとめて日本へ送るという郵送法を用いた。 各調査の回収数および回収率は以下のとおりである。①サーミ住民5名への聞き取り。なお、対象者にサーミ議会議長を含む。②配布数29、回収数4、有効回収率13.8%(聞き取り1名を含む)。③配布数56、回収数16、有効回収率28.6%(聞き取り1名を含む)。④配布数9、回収数3、有効回収率30.0%(聞き取り2名を含む)。⑤配布数31、回収数15、有効回収率48.4%(聞き取り3名を含む)。 これらの調査の結果は、平成24~27年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)研究課題「先住民族の労働・生活・意識の変容と政策課題に関する実証的研究」研究代表者小内透(課題番号24243055)とともに、北海道大学大学院教育学研究院教育社会学研究室『調査と社会理論研究報告書29ノルウェーとスウェーデンのサーミの現状』にまとめられている。 なお、調査計画で予定していた北海道内アイヌ民族調査はスウェーデン調査をより充実したものとするため実施しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4カ年の計画のうち、半分の2カ年を終えた。4年間でスウェーデン調査2回、国内アイヌ調査2回を計画し、24年度で2回目のスウェーデン調査を終えている。2度のスウェーデン調査ではサーミ議会やサーミ学校を始めとするスウェーデンの各種サーミ機関において貴重な情報を収集できたほか、聞き取り調査、アンケート調査によりサーミ学校教員や保護者、工芸学校学生をはじめとする多くのサーミの声を聞くことができた。これは当初の予定を上回る成果である。また、24年度のスウェーデン調査においては、サーミ議会よりサーミ議会選挙の選挙権をもつサーミ全員の住所録の提供を受けられることになった。これにより、前例のない大規模なサーミ調査をおこなえることとなった。 一方で、24年度と25年度に予定していた国内アイヌ調査は、24年度実施予定分については実施をとりやめた。ただし、これはスウェーデン調査により力をそそぐためであり、それにより貴重なデータをえることができたことを考えると、当初目的とは外れているものの大きな遅れ、または後退とは考えていない。また、研究代表者が共同研究者となっている平成24~27年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)研究課題「先住民族の労働・生活・意識の変容と政策課題に関する実証的研究」研究代表者小内透(課題番号24243055)において、当初計画していたものとほぼ同様のアイヌ調査を北海道新ひだか町においておこなえたことから、研究に必要なデータは入手できたと考えている。 よって、当初の目的とは異なる形となってはいるが、おおむね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は25年度と26年度の2カ年を残しており、当初の予定では25年度に国内でアイヌ調査をおこなう予定であった。しかし、24年度のスウェーデン調査の際に、サーミ議会よりサーミ議会選挙の選挙権を持つサーミ約7500名分の情報提供を受けられることになった。 そこで、25年度は当初の予定を大きく変更し、この有権者名簿を利用したランダムサンプリングによるサーミ住民調査をおこなうことにする。これまでにスウェーデンでおこなった調査では、サーミ議会関係者やサーミ学校関係者のような、サーミの中でも特に意識の高い者が対象者となっていた。しかし、住民調査をおこなうことで、サーミの生活や教育のあり方などに関する、より一般的なサーミの人々の意識を知ることができる。このことはサーミの理解をよりいっそう深め、またよりリアルな形でスウェーデンにおけるサーミ教育の実情を知ることにつながると期待している。現時点では、1/8抽出1000人規模の調査を予定している。 25年度に予定していた国内アイヌ調査は、その意義を認めつつも実施を見送ることとした。これだけ大規模なサーミに対するサンプリング調査は過去に例を見ないものであり、そちらをできる限り大きな規模で実施することが総合的にみても有益であると判断したためである。 なお、研究代表者が共同研究者となっている平成24~27年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)研究課題「先住民族の労働・生活・意識の変容と政策課題に関する実証的研究」研究代表者小内透(課題番号24243055)において、25年度に北海道伊達市でのアイヌ調査が予定されている。本研究において当初予定していた調査内容はこちらの調査でカバーできる見込みであるため、当初の計画に即したデータは入手できると考えている。
|