研究概要 |
本研究は十分な早期支援体制がとられにくい低出生体重児を対象として,指導方法がいまだ確立されていない協調運動や手先のぎこちなさなど「気になる不器用さ」を行動的翻訳により描線動作の問題として解明し,その結果を支援方法と教材開発に反映させることにより,描線活動への効果と妥当性を縦断的研究による実証的アプローチをとおして明らかすることを目的としている。 1.「気になる不器用さ」の行動的翻訳 4~5歳児を対象に図形模写の評価とアイトラッキングによる視線追跡調査を予備的に実施し,使用する課題作成や具体的な実施法など本格実施に向けた示唆を得ることができた。 2.描線活動支援方法の開発にむけた育児サポートのニーズ調査 低出生体重児の母親が感じる育児負担感とニーズ調査を行いその結果を分析した。その結果,育児負担感に関わる因子として,「育児による不自由さ」「サポートの不十分さ」「育児の困難さ」が抽出され,「育児による不自由さ」と「育児の困難さ」の程度には出生体重とサポートの程度が影響することが示唆された。また,育児サポートのニーズとして,病院には子どもにあった育児方法の情報提供を,地域には育児による不自由さを軽減する支援を求めていることが明らかとなった。 3.低出生体重児の早期子育て支援理解を目的としたシンポジウムの開催 不器用さの理解と低出生体重児への支援に関する講演会及びシンポジウムを,教師や保護者,医療関係者など多数の参加者により開催できた。 本研究の推進にあたっては,前述の各項目においてプライバシーや個人情報の保護に十分に気をつけ,人権の保護及び法令の遵守に万全の配慮を行った。また,各実施項目の推進にあたっては,研究者グループの所属機関の研究倫理規定に基づき各倫理審査委員会の審査を受けるとともに,協力者(保護者)に対してはすべてインフォームド・コンセントを実施した。
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