研究概要 |
初年次は,追加措置による交付内定という時間的制約もあり,研究分担者との協力体制づくりや研究分担の確認を第一に考えた。国内調査については各自で情報収集を進めることとし,当面は外国調査として米国,英国,インドネシアの調査に着手した。その結果,英国とインドネシアに関しては予備的調査に留まったものの,現地の協力者とのコネクションを築くことができた。これを基に2年次には本調査を敢行し,確かな成果につなげる予定である。また,米国についてはカリフォルニア州の歴史研究者や地理研究者との交流を通じて,Big Historyプロジェクトに関する資料を入手するとともに,その理論家ともいうべきサンディエゴ大学のRoss Dunn名誉教授やUCLAのGary Nash教授,スタンフォード大学のSam Wineburg教授に直接考えを伺うことができた。 このBig Historyプロジェクトは,1.人間と環境,2.人間と人間,3.人間と思想という三つの相互作用に着目することで,人類史を巨視的なパースペクティブで捉えようとするものであり,地理と世界史を関連づけるとともに,自国史と世界史を総合する論理も併せ持っている。このプロジェクトを推進する高校も複数あり,サンディエゴ大学を中心にWorld History for Us Allというホームページも立ち上げて教材開発等の成果を公表していることから,今後それらの事例を分析するなどして,米国における地歴相関と歴史総合の原理を抽出することが可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加措置による交付内定であったことから,研究分担者との研究計画のすりあわせや,外国調査に向けたスケジュールの確保や現地協力者等との打合せに多くの時間を要し,国内の事例調査に後れをとる結果になった。その点で(3)と自己評価した。ただし,その点を除けば,外国調査も含めてほぼ予定通りの研究が遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
海外調査については9月ないし2月を目途に遂行し,本年度中に調査を完了させて収集資料の分析を行い,地歴相関および歴史総合の原理の抽出を図る。特に,昨年度予備調査に終わった英国とインドネシア,および未調査の韓国について本調査を実施し一定の成果を得る。米国についても,昨年度に引き続いてBig History Project関連の現地調査を行う。並行して,国内の民間教育団体等のカリキュラム開発の成果を収集分析して,地歴相関・歴史総合の原理を探究する。 これらの成果を踏まえ,日本の高等学校での実施を想定した地歴相関カリキュラム歴史総合カリキュラムの試案作りに着手する。そして,可能な範囲で社会科教育系学会の全国研究大会等で公表し,諸氏の批判を得る。また,研究分担者相互の連携の下に研究を推進するために,6月,10月,2月頃を目途に年3回の会合を開催して議論を深めるとともに情報の共有化を図る。
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