研究課題/領域番号 |
23330269
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
室橋 春光 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 教授 (00182147)
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研究分担者 |
河西 哲子 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 准教授 (50241427)
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
豊巻 敦人 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (70510494)
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キーワード | 発達障害 / 認知神経科学 / 脆弱性 / 回復性 / 障害特性 / 学習援助 / 生活支援 |
研究概要 |
本研究は、発達障害において少なからず障害が合併する実態がある。本研究は、脆弱性ならびに回復性を早期に検知し対応することに向けた探索的調査を目的とする。当該年度には、発達障害メカニズムとして想定されうる実行機能、作業記憶機能、眼球運動統制機能など、知覚・認知システムを中心に、生理心理学的、認知心理学的諸指標を用いて事例的に検討した。 発達障害のある児童生徒、特にLDを中心として、諸検査を実施した。眼球運動機能に関しては視標追跡眼球運動、文章黙読時眼球運動等を測定し、合併性の強いとみられる事例では眼球運動が不規則になりがちであることがうかがわれた。また作業記憶機能や音韻-書記素変換機能等に関しても、合併性の強いとみられる事例では低下しがちであることがうかがわれた。他方、表情検出課題において、広汎性発達障害のある子どもにおける情動別表情検出を検討したが、怒り表情は笑い表情よりも早く処理されていることがうかがわれ、通常発達の子どもとの違いはみられなかった。これらのことは、個々の事例において、カテゴリー診断的対応よりも、transdiagnosticな対応が望まれることを示しているといえる。 社会的環境の影響に関しては、これまでのデータ分析を中心に検討した。定時制高校の学年別QOL調査とLD,ADHD,ASD障害特性との関連性では、学年毎にQOLと障害特性の相互作用の現れ方が異なっており、社会的文脈の影響を受けることがうかがわれた。また、これらの調査を応用した親子別調査の結果をエビデンスド・カウンセリングとして利用することの有効性について検討した。これらの社会的環境の影響調査と認知科学的諸指標との間には多くの中間表現型が存在していると想定されるが、今後探索的に検討していくことの可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究補助者を2名雇用して研究業務にあたらせる予定であったが、適切な人材を確保することが困難で1名の雇用に留まったため、社会環境からの影響調査の部分でやや遅れが生じた。しかし、生理心理学的、認知科学的諸検査については、臨床的事例を中心に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、臨床事例を中心に生理心理学的、認知科学的諸検査を継続しつつ、社会環境からの影響調査の同時的に実施しデータ整理・分析にあたらせる人材を確保し、総合的評価と援助・支援プログラムの検討を行う。
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