研究課題/領域番号 |
23330269
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
室橋 春光 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00182147)
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研究分担者 |
河西 哲子 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50241427)
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
豊巻 敦人 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70515494)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 発達障害 / 処理特性 / 共通性 / 脆弱性 / 評価・支援 |
研究概要 |
発達障害には、共通的局面と特異的な部分が存在し、様々な障害特性プロフィールが存在する。本研究では、発達障害の情報処理過程における共通的基盤と特異的局面を、知覚・認知メカニズムを中心に生理心理学的・認知心理学的諸指標を用いて検討する。また障害特性や生活行動等の行動特性を評価するとともに、生理心理学的指標等との関連性を分析し、脆弱性と回復性の観点からの支援方法の検討をめざす。 平成24年度は、学習障害、特に読み書き困難を主とする発達性ディスレクシアを中心として、音韻-書記素変換機能、視標追跡ならびに黙読時眼球運動、ワーキングメモリーなどについて認知科学的・生理心理学的諸指標を測定・分析し検討した。その結果、音韻変換関連処理機能に問題のある場合、黙読時眼球運動にも問題が生じやすいことがうかがわれた。他方、文字刺激の高速提示による事象関連電位(ERP)の分析からは、読み速度と初期ERP成分に明確な相関が認められた。また読み困難において、新規語彙に対する処理が適切になされにくい場合のあることがERPから想定された。 これらのことから、音韻変換関連処理の前処理としての視覚的処理に問題があり、眼球運動統制にも影響していることが示唆された。また新奇的刺激に対する学習の困難性も想定され、ここには発達障害の共通的基盤が存在することが示唆される。また読み困難の基礎メカニズムについて、従来からの音韻処理対視覚処理といった単純な問題把握では対応できず処理の時間軸を考慮することが重要となることが示唆される。 QOL評価、社会制約評価等については、低年齢児に対応する評価法に関して先行研究を中心に検討を行った。QOL評価は従来、病弱児、入院児を対象とするものが多く、発達障害圏に対応しうるもので障害特性と相応しうるものはほとんどみられない。低年齢児評価法については、さらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発達障害の基礎的メカニズムについて、読み困難を中心として認知科学的視点から生理心理学的指標などを用い総合的に評価する中で、問題を把握する方法を検討したことや、学習メカニズムにおける共通的困難の存在に関して検討したことなどは成果といえる。 他方、支援方法との関連性については検査、データ処理等の人材確保が難しかったことなどのため、検討が遅れている。またQOL、社会的制約等に関して、これまで青年期を対象とした評価法の開発検討を行ってきたが、低年齢児に関しては先行研究も少ないため、H24年度は十分な検討ができていない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、認知科学的視点からの読み困難を中心とした処理過程に関する検討を処理時間軸に沿って学習メカニズムとの関連で支援方法との関連性も含めて再評価を検討する予定である。検査、データ処理等についは、人材配置等を工夫して進める予定である。またQOL,障害特性などについては、発達心理学領域の研究者等の協力も得ながら、低年齢児を中心とした評価法の検討を進める。発達障害圏における子どもの脳活動と行動との関連性の特質について、学習処理特性の視点から事例レベルで総合的に検討することを目指す。
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