研究課題
平成25ー26年度は、発達障害圏において知覚・認知メカニズムに関する問題が主となる発達性ディスレクシアを中心に、基礎ならびに臨床的側面から検討を行った。基礎的側面では、高速提示される文字列としてひらがなで構成される単語及び非語、並びに記号列を用いERP成分N170のふるまいを指標として、視覚的注意のありかたを分析したいくつかの実験結果を総合的に検討した。その結果、ひらがな表記に対しては、言語的処理の有無にかかわらず、初期的段階で自動的な知覚的カテゴリー化処理が行われるものと考えられた。しかし文字列に対して自動的に言語的処理が開始されるのではなく、視覚的注意が言語的処理の進行に密接に関与することが示された。これらの結果から、読みの困難には視覚的注意のありかたが強く影響しているものと想定された。また文章読解時における眼球運動を分析・検討した。読み困難のある対象児にとって未知の文章について、その文章の朗読聴取の有無による眼球運動の違いを検討した。その結果、あらかじめ朗読を聞いていた場合には、眼球運動の戻り回数が少ない傾向にあった。このことは、対象児が文脈情報を利用して読み困難に対処していることをうかがわせる。 さらに、小学生を対象とした読み・書き・算数領域における困難をチェックするために開発されたタブレット型LDスクリーニングテスト遂行時の眼球運動を、携帯型測定装置を利用して予備的に検討した。音韻処理や文理解に関するつまずきが眼球の停留を生じさせる状況を的確に測定でき、検査結果と合わせて総合的に検討することが適切な支援につながると想定された。読み聞かせの効果に関しては、自閉症圏にある児童における役割交代課題への影響について検討された。その結果、母親による物語絵本の30分ほどの読み聞かせの約6日間の継続によって文脈処理能力が増し、対象児の役割交代能力が高まったことが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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