研究課題/領域番号 |
23330279
|
研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
権藤 桂子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (90299967)
|
研究分担者 |
松井 智子 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20296792)
大井 学 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70116911)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | バイリンガル / 発達障害児 / 言語コミュニケーション / 語用論 / ASD |
研究概要 |
平成24年度の成果は以下のとおりである。 1.米国の日英バイリンガル教育プログラムを実施している小学校において言語コミュニケーション力の調査を継続した。2.カナダ、バンクーバー、トロントの自閉症親の会、現地の言語聴覚士等の協力を得て、日英バイリンガルASD児の言語コミュニケーションのアセスメントを開始した。3.米国シカゴ日本人学校および補習校において、保護者と教師を対象に日英バイリンガル教育と言語コミュニケーションの発達課題に関するワークショップを開催した。また、今後の研究協力について話し合いを持ち、次年度調査に向けての準備を開始した。4. 日本発達心理学会第24回大会(東京)で「多言語環境下で育つ児童の発達支援‐多言語併用と障害との相互作用の視点から」をテーマにラウンドテーブルを企画、実施した。本研究で得られた日英バイリンガル児およびASD児のデータについて話題提供も行った。このラウンドテーブルを通して、多言語多文化環境で育つ児童の言語コミュニケーションの発達の困難さと支援のあり方について探究するとともに、参加者間での学問的交流、今後のネットワークづくりの足がかりが得られた。5.日本コミュニケーション障害学会においてコミュニケーションチェックリストの有用性についての研究発表および日本語モノリンガルの定型発達児とASD児の文法理解についての研究発表を行った。6.International Meeting For Autism Research (Tronto)において、バイリンガルASD児の語彙と文法理解能力についての研究発表を行った。7.カナダ、ブリティッシュコロンビア州の自閉症支援に関する論文および日英2言語環境下で育つ児童の語彙発達に関する論文を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バイリンガル環境およびモノリンガル環境で育つ定型発達児の言語発達検査、言語環境調査については、当初の目標数には届かないものの、現在までにデータ収集は順調に進んでいる。発達障害児についても、当初予定よりも対象児数は少ない数にとどまっているが、米国、日本在住家族に加え、新たにカナダ在住の家族の協力を得てデータ収集を継続している。 当初予定よりも研究対象児数が大幅に少ない理由として、東日本大震災の影響等でデータ収集の中断および延期を余儀なくされたこと、バイリンガル発達障害児の居住地域が広範囲であり研究協力者の募集やデータ収集が計画時点で考えていたよりも時間がかかることなどがあげられる。 しかし、現時点までに収集したデータに基づく研究成果は貴重であり、学会、論文等を通じて継続的に公表している。また、研究者、教育者、家族等を対象としたシンポジウム、ワークショップ、ラウンドテーブル等は、当初計画を上回る内容と頻度で開催しており、目標以上に達成できていると考える。 多言語発達障害児支援にかかわる専門家のネットワークの形成については、上記ワークショップやラウンドテーブルを通して形成しつつある。多言語併用発達障害児の家族ネットワークの構築を支援しており、すでにインターネットを通じたコミュニティーが親を中心に形成され始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
日英バイリンガルASDの研究協力者をカナダ、米国で継続して募集しデータ収集を行う。現在データ収集が進んでいるものも含め、この3年間で蓄積したバイリンガル定型発達児および発達障害児のデータの解析を進める。また、8月~9月にかけて、米国の日本人学校および補習校でのデータ収集を開始する。 本研究課題は最終年度ではあるが、今後もこれまでに構築した米国、カナダ、日本のバイリンガル教育関係者、発達障害児の親の会等のネットワークを維持し、研究を継続するための基盤を形成する。 本年度は、The International Symposium on Bilingualism、日本発達心理学会、日本コミュニケーション障害学会等、内外の学会においてこれまでの成果を発表する予定である。年度末には、成果を報告書としてまとめる。また、日本コミュニケーション障害学会誌において特集「多言語多文化環境とコミュニケーション障害」を企画しており、本研究の成果も一部発表する予定である(出版は26年度)。
|