研究課題/領域番号 |
23340002
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三町 勝久 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40211594)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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キーワード | 複素積分 / 超幾何函数 / 表現論 / Selberg積分 / Mehta積分 / モノドロミー表現 / 既約性 / フックス型微分方程式 |
研究概要 |
Gaussの超幾何函数の良い多変数化に向けて,ルート系に対する超幾何函数と複素積分の二つのながれを統一的に把握するのが本研究の目的である.具体的には,1.複素積分(局所系係数のde Rham 理論),2.表現論と微分方程式:(a) 微分方程式に付随するモノドロミー群を調べることと解の接続問題を解くこと,(b) ルート系に付随した超幾何函数のみたす性質を調べること,3.位相不変量への応用,4.数理物理への応用である. 一般化超幾何函数_nF_{n-1}, Appellの超幾何函数F_2,F_3,F_4のモノドロミー群は,とりあえず,数年前に決定済みであるが,その既約性・可約性の条件決定までを籠めて,いざ,論文としてまとめ直そうとすると,もう少し,詳細な性質を確定することが望ましいと思うような点が次々に現れてきた.本年度は,それらを少しずつ明確化することを行ったが,いまだ,不満足な個所がいくつか残っているままであり,今後も,継続するが,早期の解決を目指したい.また,これに派生して,ゲルファントの超幾何函数との関連も,次第に明らかになりつつある. セルバーグの積分公式の合流版であるところのMehtaの積分公式は,ランダム・マトリクス理論における相関函数の研究に不可欠なものである.この公式の証明は,セルバーグの積分公式を仮定して,その合流操作で得ることができるが,これ以外の方法は,未だ知られていない.ところが,複素積分の理論からの視点によると,直接的な証明がしかるべき形であるはずと考えられ,一方で,その構造が明らかにならねば,複素積分の理論の対象として取扱い不可能のままとなってしまう.このような動機で,新たな証明を探す努力を開始したが,n=2,3,4,5の場合のn重積分にしか成功しておらず,一般のnの場合には皆目見当がつかない.今後も鋭意努力したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガウスの超幾何函数_2F_1,一般化超幾何函数_nF_{n-1}, Appellの超幾何函数F_2,F_3,F_4に付随するモノドロミー群の研究は,ほぼ最終的な段階に達している.あとは,論文に仕上げるための,細かい,しかし,重要な,いくつかの箇所を明らかにすれば,これら古典的超幾何函数についての本研究はほぼ達成である. Mehtaの積分公式の別証明に着手し,積分変数が少ない場合(n=2,3,4)の別証明が得られたことは大きなステップである.n=2の場合でも,これを得るのに数週間を要した.一般的なn重積分の場合を理解するまでは,まだ長い道のりを要するであろうが,それだけ難しい問題を克服する価値は大きいと理解している.
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今後の研究の推進方策 |
Appellの超幾何函数F_2,F_3に関する論文を早くまとめたい.場合によっては,いくつかに分割することも検討している.同じく,Appellの超幾何函数F_4についても早期に論文としてまとめねばならぬが,ロンスキアン公式はいまだ得られていないので,これも分離した形の論文とすることを検討している.一般化超幾何函数についても同様である. このほか,アクセサリーパラメタのない微分方程式の重要な例であるEven-Odd familyについて,その接続問題を原岡喜重(熊本大)との共同で解決したり,Meixner-Pollaczek多項式の多変数版と表現論(調和解析)との関係を若山正人(九州大),J.Farout(パリ大)と共同で研究を進める一方, Mehtaの積分公式の理解を金子譲一(琉球大)の協力を得ながら進めていく予定である.
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