研究課題/領域番号 |
23340002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三町 勝久 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (40211594)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複素積分 / 超幾何函数 / モノドロミー表現 / フックス型微分方程式 / Selberg型積分 / Mehta積分 / 既約性 / Appell |
研究実績の概要 |
Appellの超幾何函数F_2, F_3, F_4, 一般化超幾何函数_{n+1}F_nに付随するモノドロミー表現の研究がほぼ最終的な段階に達してから,しばらくの時間が経過していた.これに対して,Appellの超幾何函数F_2, F_3については,ようやく,細部の箇所の議論が仕上がり,論文を投稿する段階に達した.ここで与えた表現は中桐悦二が1979年にその修士論文で与えた表現を再現したものであるが,複素積分表示された解がいかなるときに対応する微分方程式の解になるかという条件を徹底的に調べあげて議論したおかげで,モノドロミー表現を得るために課するパラメータに対する条件を劇的に緩めることに成功した.そして,得られたモノドロミー表現を利用することで,モノドロミー表現が既約となる十分条件を決定することができた.これはE.Bod (ユトレヒト大)が2012年に得た必要十分条件の十分性に対応しているが,Bodの方法はF.Beukers(ユトレヒト大)によるA超幾何函数に対する結果(2011年)を応用したものであり,これと比べると,我々の方法は初等的である.一方,F_2, F_3,F_4の既約条件の十分性については,佐々木武との共同研究で解決でき,これについては,短い論文としてまとめて,すでに受理されている.そこで用いた方法はパラメタの異なる微分方程式系をつなぐcontiguity operatorsの核を調べることであって,Beukers-Heckmanが一般化超幾何函数_{n+1}F_nの既約性の必要条件を決定する際に用いたアイディアを用いている.
これ以外に,グラスマン多様体上の超幾何函数E(m,n)のみたす方程式系の既約性,可約性の議論を佐々木武との共同研究で行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
古典超幾何函数のうち,Appellの超幾何函数F_2, F_3, F_4, 一般化超幾何函数_{n+1}F_nに付随するモノドロミー表現の研究が,ほぼ最終的な段階に達してからしばらく時間が経過していた.これに対して,今年度は,Appellの超幾何函数F_2, F_3についての細かな箇所の議論まで仕上がり,論文を投稿する段階に達した.しかし,Appellの超幾何函数F_4と一般化超幾何函数_{n+1}F_nについては,論文完成までには至っていない.
また,その既約性を論じようとする動機が出発点となって,グラスマン多様体上の超幾何系とその隣接関係式についての基本事項を整理する論文を執筆したが,これは,当初計画には無い研究内容であった.しかし,その研究で得たアイディアを応用することにより,Appellの超幾何函数F_2, F_3, F_4が可約になる条件を,初等的に導くことができた.予想外のことであった.
昨年度に着手したMehtaの積分公式の別証明の研究は,今年度は一切の進展がみられなかった.
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今後の研究の推進方策 |
Appellの超幾何函数F_4と一般化超幾何函数_{n+1}F_nに関する論文を早くまとめたいが,ロンスキアン公式は,未だ得られていないので,論文の構成を工夫して論文の形にすることも想定したい. Mehtaの積分公式の別証明の研究を再開し,金子譲一(琉球大)との共同研究を開始したい. 今年度に行えなかった,アクセサリーパラメタの無い微分方程式の重要例であるEven-Oddfamilyについて,その接続問題を原岡喜重(熊本大)との共同研究で解決したい.同じく,Meixner-Pollaczek多項式の多変数版と調和解析との関係を若山正人(九州大),J.Farout(パリ大)と共同で研究を進めたい.
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