Gaussの超幾何函数の良い多変数化に向けて,ルート系に付随する超幾何函数と複素積分の二つのながれを統一的に把握するのが本研究の目的であり,具体的には,1.複素積分(局所系係数のde Rham 理論),2.表現論と微分方程式:(a) 微分方程式の解の大域構造を調べるために,微分方程式に付随するモノドロミー群を調べることと解の接続問題を解くこと,(b) ルート系に付随した超幾何函数(Heckman-Opdamの超幾何函数およびそのq類似など)のみたす性質を調べる等である.このうち,本年度は2(a)の課題を主にとりあげた.詳細は次のとおりである.
一般超幾何微分方程式{}_{n+1}E_nの解の基本系をあるオイラー型の積分表示による函数達により与え,それを基底とする回路行列を明示的に求めた.このとき,それらの函数達の存在条件と一次独立性を保証する条件とを,対応するロンスキアンの計算により,明示的に求めた(パラメタについての条件).そのおかげで,Beukers-Heckmanによりすでに得られているところの,微分方程式の既約性条件(これは回路行列により生成される群(モノドロミー群)が既約である条件と同値)と照らしあわせることにより,可約な場合の(モノドロミー群に対する)不変部分空間を取り出せる.このストーリーで語られる内容は,異なる二つの基本系について実行したのであるが,一つは,原点の近傍で標準的な級数表示をもつものを基本系(特性指数はお互いに整数差でないという強い条件を課す)として採用したもの,もう一つは,級数表示で探すと見つけられない積分表示独特の標準的な基底に対するものを基本系として採用したものであり,後者は積分域が(相対)コンパクトなもの(すべて)で与えられるものである.そして後者の場合に得られる回路行列が有効である場合は既約な場合すべてをカバーしている.
|