坂田との共著論文において,高さが1の多重ゼータ値を,インデックスに1を含まないような多重ゼータ値(”maximal height”)のある対称的な和で表す公式を,いわゆる荒川金子ゼータ関数を用いて証明した. そこでは発散の正規化の議論を用いる.また,正規化版の和公式も証明した.ここにも高さが1の多重ゼータ値が現れる.さらに,同じ重さを持つmaximal height の多重ゼータ値全ての和の母関数が,2のみをインデックスにもつ等号付き多重ゼータ値と3のみをインデックスにもつ多重ゼータ値の母関数によって表されるという公式を発見,証明した.これはホフマン予想(ブラウンの定理)を思い出させる興味深いものであり,深さも動かしたときの2変数の母関数がどうなるか,など,更なる考察の余地があり発展が期待される. また有家,永友,境との共著論文において,ある種の微分方程式を満たすモジュラー形式の理論が,ある型のアフィン頂点作用素代数の分類に応用が出来ることを示した. 具体的には,正整数レベルをもつアフィン頂点作用素代数で指標の次元が5以下のものをすべてリストアップし,その指標の空間の基底がモジュラー微分方程式の解で張られることを示した.一般には,指標はあるモジュラー微分方程式の解であることが知られているが,解全体が丁度指標の空間に一致する場合とそうでない場合がある.5次元以下の場合は常にそうであることを示したのが本論文であるが,6以上の状況について調べていくのが今後の課題である. 有限多重ゼータ値について,特にその「主予想」について,各地で多くの講演を行った.
|