研究課題/領域番号 |
23340015
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
太田 啓史 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50223839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シンプレクティック幾何 / フレアーコホモロジー / ミラー対称性予想 / ラグランジュ部分多様体 / 倉西構造 / 仮想基本類 / 反シンプレクティック対合 |
研究概要 |
本研究課題の連携研究者でもある深谷賢治氏(Simons Center for Geometry and Physics, 米国)、小野薫氏(京都大数理解析研究所)及びY.-G. Oh氏(IBS Center for Geometry and Physics, 韓国)との共同研究により、フレアーコホモロジーの研究を行い、今年度は次の研究を行った。 まず、昨年度から引き続き倉西構造の基礎理論および仮想基本類およびチェインの構成について、多くの人々が使い易いようにいくつかの基礎的な部分をパッケージ化して提示する論文(Technical details on Kuranishi structure and virtual fundamental chain 2: fiber product of Kuranishi structures, system of Kuranishi structures, and continuous family of perturbations)を執筆中である。現在すでに500ページの原稿になっているが、まだ公開できる状態ではない。この論文は、例えば、トーリック多様体のミラー対称性予想やスペクトラル不変量に関する論文など我々の仕事の基礎部分を多くの人々に納得しやすいようにするためにも必要であろうと考える。 投稿中の論文のレフェリーの要求に応じて、反シンプレクティック対合の不動点に関するラグランジアンフレアー理論の論文の改訂を行なった。特に、カーブシステム付きの安定写像のモジュライ空間の位相、倉西構造について、詳細に記述した。また対合対称性をもったA_{n,K}構造を対合対称性を保ったままA無限大構造にあげていく障害理論についてもまとめておいた。 他に、整数環上のラグランジアンフレアー理論の論文を出版することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倉西構造の基礎理論に関する論文を準備執筆することに多くの時間と労力を費やしている。これは本研究課題の当初研究目的には入っていなかったことであるが、「研究実績の概要」欄でも述べたように、倉西構造の理論は我々の研究課題を遂行するためには必要不可欠なものであるので、このことは本研究課題遂行が遅れていることを意味するわけではない。むしろ、今後我々の研究がやりやすくなる素地を作っているという点では研究課題は着実に進んでいるといえる。実際、上記の論文ができあがると、スペクトル不変量の研究やトーリック多様体のミラー対称性予想に関する研究は、それを援用する形で進めることが可能となり、議論が簡潔になることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、連携研究者でもある深谷賢治氏(Simons Center for Geometry and Physics, 米国)、小野薫氏(京都大数理解析研究所)及びY.-G. Oh氏(IBS Center for Geometry and Physics, 韓国)との共同研究を継続する。 まず、倉西構造の基礎理論および仮想基本類およびチェインの構成について、多くの人々が使い易いようにいくつかの基礎的な部分をパッケージ化して提示する論文(Technical details on Kuranishi structure and virtual fundamental chain 2: fiber product of Kuranishi structures, system of Kuranishi structures, and continuous family of perturbations)を早急に完成させて公開することを目指す。 倉西構造の基礎理論の論文が一段落した後、そのために昨年度より中断されていた一般のコンパクトなシプレクティック多様体の深谷圈の生成元の判定に関する定理の証明を、M. Abouzaid氏(コロンビア大、米国)も共同研究者に迎え、完成させたい。完全シンプレクティック多様体の場合には既にAbouzaid氏の判定法が知られており、これを一般のシンプレクティック多様体の場合に拡張する必要があるわけであるが、この点については、我々4名により10数年にわたって構築されたフレアーコホモロジーの障害・変形に関する基礎理論がフルに用いられる。 これらの研究の各段階で、共同研究者および専門家との間での研究打ち合わせが重要となり、国内外の旅費は豊富に必要となる。
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