ゲージ群のホモトピー論とKO理論に関するふたつの実績を得た。 (1)主G束Pの自己同型のなす位相群をPのゲージ群と呼ぶ。ゲージ群はゲージ理論におけるゲージ変換全体を表すもので、ファイバー束の理論やゲージ理論、また、ファイバーワイズホモトピー論などにおいて重要な研究対象とされている。また、近年、SalvatoreらによるPの随伴東と呼ばれるファイバーワイズ位相群のThomスペクトラムへ導入された環構造とstring topologyとの関係の発見により、随伴東の切断全体と同一視されるゲージ群の重要性は再認識されている。ゲージ群は主束Pの構造群Gの性質を効果的に受け継ぐことがこれまでの研究によりわかってきた。リー群のホモトピー論的性質で重要なものの一つがmod p 分解と呼ばれる、素数pで局所化したときの空間の積による分解である。発表論文"Mod p decompositions of gauge groups"においてこのリー群のmod p 分解をゲージ群に拡張し、ゲージ群の局所的な性質の研究の基礎を与えた。また、発表論文"On p-local homotopy types of gauge groups"では、上記論文におけるゲージ群のホモトピー型の分類を深化させ、pがある程度大きいときに完全な分類を与えた。 (2)KO理論は古典的なコホモロジー論であるが、近年、Hermitian K理論やモチビックコホモロジー論の観点からも注目されている。これまでの研究により旗多様体のKO群は決定されたのだが、表現論的に並列であるはずのパラボリック部分群による商空間に関しては未知であった。発表論文"KO-theory of complex partial flag manifolds"ではこのような商空間の典型である非完備旗多様体のKO群を決定した。その手法は一般のパラボリック部分群による商空間へ応用できると考えられる。
|