研究課題/領域番号 |
23340020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 一之 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70188291)
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研究分担者 |
鈴木 登志雄 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30235973)
只木 孝太郎 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (70407881)
山崎 武 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30336812)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 数学基礎論 |
研究概要 |
本研究のねらいは、数学基礎論的方法、とくに超準モデルを用いる手法により、ランダム性のダイナミズムを巨視的かつ組織的に捉え、ランダム性に対する理解を一層深めると共に、その根底にある確率やゲームの基本概念に対して新たな計算論的知見を得ることにある。そのため、この領域の研究が盛んな諸外国との交流を促進すると共に、将来を担う人材の育成と周辺分野との連携強化を図り、研究の基盤を固める。 本年度は次の5つの小課題を中心に研究を遂行した。1. 超準解析の論理的基礎について、計算可能な力学系を扱うことで、アルゴリズム的ランダム性とエルゴード性との関係を調べた。2. ランダム性の概念に基づく圧縮可能性の観点から新たな還元可能性を導入し、それによる次数構造と、従来の次数構造の関係を調査した。3. 決定木について、特に各ビットに0、1が割り振られる確率が独立である場合の計算複雑さについて調べた。4. 停止確率Ωを一般化した様々な熱力学的量を導入し、その不動点の性質を明らかにして、アルゴリズム的ランダム性と統計力学を結び付ける理論を推進した。5. 確率論とゲーム論が本質的な役割を果たす暗号の安全性概念に対して、アルゴリズム的ランダムネスを適用した。確率論的なランダム性をアルゴリズム的ランダム性に置き換え、更には、ランダム性を計算可能化する理論について探求した。 2013年2月には東京工業大学で,国際研究集会 Computability Theory and Foundations of MathematicsをベルギーのWeiermann教授と共催し、ペンシルバニア州立大学のSimpson教授やシンガポール国立大学のChong教授に招いて本研究の進展状況についてアドバイスを受け、併せて仙台においては勉強会 Sendai Logic Schoolを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のねらいは、数学基礎論的方法、とくに超準モデルを用いる手法により、ランダム性のダイナミズムを巨視的かつ組織的に捉え、ランダム性に対する理解を一層深めると共に、その根底にある確率やゲームの基本概念に対して新たな計算論的知見を得ることにある。そのため、この領域の研究が盛んな諸外国との交流を促進すると共に、将来を担う人材の育成と周辺分野との連携強化を図り、研究の基盤を固める。国内外の研究者と先行研究について情報交換をし、研究の方策を検討することは重要な目的の一つであり、それが順調に進展している証拠として、2月18日~20日に東京工業大学で国際研究集会 Computability Theory and Foundations of Mathematicsを主催して、70名以上の参加者があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究準備に基づき、数学基礎論的方法によるランダム性の理論的、また応用的研究を一層進める。昨年度に続き,5つの小課題に分けて研究を遂行する。1. 超準解析の論理的基礎については、引き続きアルゴリズム的ランダム性とエルゴード性との関係を調べるとともに、構成的測度論の超準解析的議論の枠組みを作る。2. ランダム性の概念に基づく計算構造についての研究する。3. Alternating Turing machine の計算木への応用および、AND-OR 木とは限らない一般のブール関数への拡張について研究する。4. 停止確率Ωを通してアルゴリズム的ランダム性と統計力学を結びつける理論を完成させ、さらに量子測定の困難さと不完全性定理の関係について考察を進める。5. ゲーム理論の論理的基盤を一層明らかにして、それに基づいた確率的理論を展開する。より広範囲の研究者との交流を目的とした国際会議を開催する。
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