研究課題/領域番号 |
23340027
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾畑 伸明 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10169360)
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研究分担者 |
福泉 麗佳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00374182)
長谷川 雄央 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (10528425)
瀬川 悦生 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (30634547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 関数解析学 / 量子確率論 / 無限次元解析 / 複雑ネットワーク / スペクトル解析 / フォック空間 / 量子ホワイトノイズ / 量子確率過程 |
研究概要 |
本研究は、解析的側面として量子ホワイトノイズ理論、代数的側面として複雑ネットワークのスペクトル解析をコアテーマとして取り上げ、その基礎理論を深化させるとともに関連分野との連携を強化し、量子確率解析を大きく展開することを目指している。特に、古典論の背後にある非可換的な構造をさぐり、量子確率過程の一般化を発展させ、ネットワーク上の確率解析や非線形方程式に新しいアプローチを導入することを念頭に5課題を設定している。 1.フォック空間上の作用素の変換理論:一般化されたグロス・ラプラシアンの指数関数で生成される変換群において、微分方程式と正規積への変換を中心に研究を継続している。2.一般化された量子確率微分方程式:量子ホワイトノイズ微分の高階化を試み、関連して微分方程式の諸性質を調べた。3.多様な独立性に付随する量子確率解析:有向グラフのマンハッタン積を手掛かりにして、順序概念を含むような独立性を定式化する試みを続けている。4.複雑ネットワーク上の量子確率解析:代数的中心極限定理として、直積グラフの距離kグラフの隣接行列の漸近的スペクトルを導出した。超立方体に対して加重付隣接行列を導入して、スペクトルをq変形エルミート多項式で記述した。5.物理学への応用:ネットワーク上のパーコレーションを中心に、臨界相が出現するための条件をグラフの構造から探求するとともに、多くの具体例に対して数値計算による検証を行った。スパイダーネット上の量子ウォークが局在化を起こすための条件をスペクトル解析を用いて導出した。一般のネットワークに対して議論を発展させるために、具体例の蓄積を続けている。グラフ上の非線形シュレーディンガー方程式や波動方程式と量子確率解析の関連について研究を継続している。 非可換解析をテーマとする研究会を主催し、海外研究者も含めて周辺分野の研究者との研究協同を確保している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.新しく導入した量子ホワイトノイズ微分の手法を、2次ホワイトノイズの指数関数に適用して、正規積に変換する手法の有効性を確信した。作用素の正規積を微分方程式の解として求める系統的な手法を洗練することで、さらなる発展性が見込まれる。 2.マンハッタン積のスペクトル解析が進展し、隣接行列が非対称行列になる有向グラフに対するアプローチが見えてきた。当初あまり念頭になかった古典的な振動子系への応用も拓けてきた。 3.量子ウォークの局在化について多くの具体例の蓄積が進んだ。特に、スパイダーネットについてはスペクトル解析の成果として、局在化のための具体的な条件が導出された。このことから、グラフの構造と局在化の関連について新しい方向性が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎え、過年度の成果をもとにさらなる理論の深化をめざす。また、海外研究者を招へいして研究集会を主催する。1.フォック空間上の作用素論として「量子ホワイトノイズ理論」を見直し、量子物理などで要求される作用素のスペクトル解析を組み入れるための枠組みを考察する。量子ホワイトノイズ微分による微分方程式の一般論を進展させ、高次の量子ホワイトノイズを含む作用素の特徴づけをめざす。2.古典確率解析におけるブラウン運動の変換を見直して、量子版を構成する。ギルサノフ変換やボゴリューボフ変換を2次の量子ホワイトノイズで統一的に扱うことを試みる。場の量子論の研究者の協力を得て、ユニタリ化問題や散逸量子系への応用を目指す。3.グラフ上の非線形シュレーディンガー方程式との関連を軸に、グラフ上の量子確率解析を構築する。4.相互作用フォック空間のアイデアを拡張して、多変数直交多項式を具体例を通して理解する。5.複雑ネットワーク上のダイナミクスに量子確率解析を適用する枠組みを作る。特に、パーコレーションに関連する相転移現象をグラフの構造と関連させて理解を深める。
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