研究課題/領域番号 |
23340033
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
千原 浩之 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授 (70273068)
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研究分担者 |
宮嶋 公夫 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授 (40107850)
筧 知之 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70231248)
小櫃 邦夫 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 准教授 (00325763)
伊藤 稔 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 准教授 (60381141)
小野寺 栄治 高知大学, 教育研究部 自然科学系, 准教授 (70532357)
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キーワード | 擬微分作用素 / 幾何解析 / バーグマン変換 / 量子化 / 分散型偏微分方程式 / 初期値問題 / シュレーディンガー写像 / 分散型写像流 |
研究概要 |
平成23年度の研究実績について研究代表者の研究活動を中心に述べる。 1.4階分散型写像流の初期値問題の幾何解析について、千原(研究代表者)と小野寺(研究分担者)によっていくつかの顕著な研究成果が得られた.実数直線あるいは1次元トーラスからコンパクトなケーラー多様体への写像流のみたす4階分散型偏微分方程式系に対する初期値問題の短時間解の存在定理を考察した。すべての先行研究は実数直線から2次元球面への写像流を2次元球面の複素平面への立体射影による複素数値関数のみたす偏微分方程式の場合だけを考察しているが、本研究の場合にはそのような制約は全くない。まず、千原と小野寺の共同研究により、定義域が実数直線の場合について短時間解の存在定理を得た。これは定義域が非コンパクトであることによる解の平滑化効果を上手く利用した研究である。次に、小野寺が単独で定義域が1次元トーラスで標的多様体が定曲率リーマン面の場合の短時間解の存在定理を職人芸的計算で確立した。この結果は平滑化効果がないので状況下では成立しないと予想していたので非常に驚きであった。千原は小野寺のこの結果に対応する線型偏微分方程式系の初期値問題の適切性を特徴づけ、写像流における定曲率条件が必要十分条件に相当することを示したので、小野寺の結果は標的多様体が実2次元の場合の最終結果であることがわかった。 2.ポアンカレ円盤上の擬微分作用素論はZelditch(1986)に導入され、一様にproperly supportedな作用素のみ期待される基本的性質の成立が示されている。千原は単独でこの制約の除去に最も時間をかけて取り組んだが、副産物として将来有効かもしれない球関数の性質をいくつか得たに留まっている。 3.鹿児島大学数理情報科学談話会、第7回鹿児島代数・解析・幾何学セミナー、MSJ-SI2011の企画セッションの1つであるTopics in Dispersive Equations等に本研究と関連の深い研究者に招待講演を依頼し、情報交換や討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、課題A「曲がった空間での解析学の大域的手法の構築」と課題B「多様体の間の写像や写像流の幾何解析」の2つの課題を対象としている。課題Aはやや遅れているが、課題Bについては1つの問題に関して予想外に進展し最終結果を得ているので、トータルでは概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は課題Aに特に重点を置いて進める。昨年度から取り組んでいるホアンカレ円盤上の擬微分作用素論の構築に関して、可能な限りのアイデアを試していく。また、円盤モデルをB模型とみなすBerezin-Toeplitz量子化理論の構築の研究は完全に準備が整っているのでなるべく早く着手したい。その他にも準備が整っている課題がいくつかあるので順次取り組みたい。一方、課題Bについては、昨年度の成果を数編の論文にまとめてから、周辺の課題へ着手する。特に、カルタン理論を応用した可積分系の幾何解析という分野を1例でもいいからぜひ開拓したい。
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