研究実績の概要 |
非線形熱方程式やその系の解の形状解析、動的境界条件付き半線形楕円型方程式の解構造と漸近解析、非線形境界条件付き熱方程式の可解性および爆発時刻の評価について研究を行った。
(1) P. Salani 氏 (イタリア、フィレンツェ大学) と共同研究を行い、昨年度までの形状解析の研究を深化させ、放物型方程式の解の放物型凸性およびその応用について研究を行った。例えば、全空間における熱方程式の解のある変形や解の時間積分がある種の放物型凸性を有すること、領域のミンコフスキー和と対応する解の新しい関係の発見、解の再配置理論への応用を行った。さらに、中川和重氏 (福島大学) を加え、ある非線形放物型方程式系の解の放物型凸性について研究を行った。非線形放物型方程式系に対する解の凸性の研究は、従来の解析手法が適応できないために過去に例がなく、当研究成果は我々の解析手法の優位性を示していると考えている。 (2) Marek Fila 氏 (スロバキア、コメニウス大学), 川上竜樹 氏 (大阪府立大学) と共に、動的境界条件付き半線形楕円型方程式について研究を行い、時間大域可解性と時間局所可解性の同値性、極小解はある境界条件付き半線形楕円型方程式の極小解の進行波解として記述されることなどを証明した。 (3) 指導学生である佐藤龍一氏 (東北大学) と共同研究を行い、非線形境界条件付き熱方程式に対して、解の可解性の研究および爆発時刻の評価を行った。解の爆発時刻の評価を行う際, 初期値の集中の度合いを計ることが重要であるが, 一様局所ルベーグ空間を用いることによって, 初期値の集中の度合いを評価し, その大きさによって解の爆発時間について下からの評価を与えることに成功した。この評価は, 解の自己相似変換に不変な評価となっている. さらに, この研究成果は, 初期値が十分に大きい場合や小さい場合の解の存在時間の最適評価, 解の爆発の速さに関する下からの最適評価を与える。
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