研究概要 |
主な研究実績は以下の通り. (1)ユークリッド平面上の離散曲線の等周変形を考察し,discrete mKdV方程式で記述される離散的運動,およびsemi-discrete mKdV方程式で記述される連続的運動,およびそれらのBacklund変換を定式化した.また,τ函数を用いて連続曲線の連続的運動も包摂する曲線の明示公式を構成した.さらに,連続極限を議論し,離散曲線の離散的運動→離散曲線の連続的運動→連続曲線の連続的運動という極限移行が運動・変換・解の全てのレベルできちんと成り立つことを示した. (2)(1)の副産物として,Wadati-Konno-Ichikawa(WKI)方程式やDym方程式,Short pulse方程式などループソリトンを許容し,ホドグラフ変換で他のソリトン方程式と結びついているクラスの方程式を考察し,ホドグラフ変換の幾何学的意味(曲線のEuler-Lagrange変換)を明らかにした.それを利用し,ホドグラフ変換およびそれらの方程式の(半)離散化を定式化した.それらは可変ステップサイズ制御を組み込んだ形の離散化になっており,特に光ファイバ中の極超短波長のパルスの伝播を記述するshort pulse方程式は工学的な応用も期待される. (3)Bobenkoらが提出した離散冪函数に対して,パンルヴェVI型方程式の超幾何τ函数を用いた明示公式を構成した.その公式に基づき指数や定義域の拡張を行い,特に指数の実部が1に等しい場合ははめ込みになっており,すなわちcircle patternが対応することを厳密に証明した. (4)ユークリッド空間において,等周条件の下での連続曲線および離散曲線の連続的運動の定式化に成功した. (5)クライン幾何の一つである相似幾何において,Burgers方程式で記述される曲線の運動に対してτ函数による明示公式を構成し,それを元に離散化を定式化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記したうち,「離散ソリトン系や離散曲線の周期解の構成」については着手が遅れているが,空間離散曲線に関して新たな進歩をしたり,予期していなかったクライン幾何における離散曲線の理論に関して新しい結果を得るなど,全体としてはおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現状の進め方で問題はないと考えており,今の研究組織で着実に考察を進めて行く.特に,空間離散曲線の理論に大きな進展が見られる気配があり,それができれば自動的に離散曲面の理論が定式化できる.そこで,来年度は空間離散曲線の理論の定式化と明示公式の構成を集中的に進めて行きたい.また,離散正則函数の理論についてもパンルヴェ系の理論に基づいた拡張に挑戦する.
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