研究課題/領域番号 |
23340038
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 太 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10374901)
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研究分担者 |
加藤 信 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10243354)
西尾 昌治 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90228156)
佐藤 洋平 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特任准教授 (00465387)
石渡 通徳 福島大学, 共生システム, 准教授 (30350458)
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60549749)
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キーワード | 臨界型変分問題 / 多重バブル解 / 爆発解析 / グリーン関数 / 質量集中現象 |
研究概要 |
本研究課題の研究目的は、「臨界型」と呼ばれる変分構造を持つ楕円型方程式(系)の非コンパクトな解の族のうち、領域内の複数点で集中・爆発現象を起こす「多重バブル解」の解空間構造と領域の位相幾何学的・微分幾何学的性質との関係や、多重バブル解の定性的・漸近的性質について、無限次元臨界点理論・爆発解析・ポテンシャル理論・大域変分法などの数学的理論を駆使して、多角的側面から解明することにある。より具体的には、 (1)多重バブル解の解空間構造と領域の幾何との相関の解明 (2)多重バブル解のスペクトル解析的性質の研究 (3)爆発が誘導する多重バブル解の定性的性質 (4)多重バブル解の爆発点集合の位置決めに関する未解決問題の解明 の4項目に焦点を当てて研究を遂行する。 本年度において、研究代表者高橋は、主に研究目的(1)に着手した。既に高橋はGrossiとの共同研究(JFA2010)によって「2点以上で爆発する多重爆発解は凸領域上には存在しない」という強力な非存在定理を得ており、領域が凸でない場合が次の考察の対象となる。もっとも簡単な非凸領域である2次元円環領域上では、爆発点の位置決めを行うハミルトニアンが具体的に計算できることを利用して、「2次元円環領域上のリウビル方程式の2点爆発解の爆発点は原点に関して対称な位置にある」という部分的な結果を得た(M.Grossiとの共同研究)。高橋達の予想は「2次元円環領域上の$n$点爆発解の爆発点は、正$n$角形の頂点に並ぶ」というものであるが、その証明の第1歩となる肯定的結果といえる。また、高橋は一般領域上で2次元リウビル方程式の多重爆発解を扱い、「爆発点の個数は解のMorse指数以下である」という簡明な結果を得た。さらに高橋は、Navier境界条件付き多重ラプラス作用素のGreen関数がみたす積分型恒等式を証明し、その応用としてある種の対称領域上でのロバン関数の臨界点の非退化性を示した。この研究は今後、高次元領域上での臨界Sobolev型方程式の爆発解析を行う上で重要になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元円環領域上でのリウビル方程式の多重爆発解の爆発点の位置決めについては、ハミルトニアンの具体的計算と「動平面の方法」により、我々の予想通りの肯定的結果が得られ、研究が進展した。しかし、3点以上の爆発点を持つ多重バブル解についてはこの方法は適用できず、現在はまだ新しい方法を模索中である。多重爆発解の定性的性質の解明については研究を開始したばかりであるが、時間をかけることで一定の研究成果が得られるものと考えている。これらの研究成果は適切な時期に各種研究集会で発表されており、高橋は本年度に国際研究集会・学会発表を含む研究講演を12回行っており、発表活動は十分であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
円環領域上のリウビル方程式の多重爆発解に関する研究を完成させるために、高橋は研究分担者石渡とともに本年度に引き続いて近くローマ大学のGrossi教授を訪問する予定である。また、2012年7月にアメリカおよびチリで行われる国際研究集会に本研究課題の研究分担者たちとともに参加し、研究発表のほかに、海外の専門家からの批判・助言を受ける。研f究分担者佐藤は、2012年度後半からS.S.Chern研究所(中国・南開大学)に長期に滞在し、佐藤の受け入れ研究者であるZ.Q.Wang教授とも本研究課題について議論を行う予定である。高橋が佐藤とともに大阪市立大学で新規に立ち上げた「南大阪応用数学セミナー」、および佐藤・渡辺が本研究課題からの旅費補助を受けて主催する「変分問題セミナー」に海外からの研究者を活発に招聘し、機会あるごとに助言を受け、また議論の場を設ける。
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