研究課題/領域番号 |
23340038
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 太 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10374901)
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研究分担者 |
佐藤 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 講師 (00465387)
加藤 信 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10243354)
石渡 通徳 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (30350458)
西尾 昌治 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90228156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 臨界型変分問題 / 多重バブル解 / 爆発解析 / 質量量子化 / 非線型ノイマン境界条件 |
研究概要 |
本研究課題の研究目的は、「臨界型」と呼ばれる変分構造を持つ楕円型方程式の非コンパクトな解の族のうち、特に領域内の複数点で集中・凝集・爆発などの臨界現象を起こす「多重バブル解」の解空間構造と領域の幾何との相関、及び多重バブル解の定性的・漸近的性質について、無限次元臨界点理論・爆発解析・線形ポテンシャル理論などを援用して多角的側面から解明することである。具体的には、以下の4項目について研究を推進中である。 (1)多重バブル解の解空間構造と領域の幾何との相関の解明 (2)多重バブル解のスペクトル解析的性質の研究 (3)爆発が誘導する多重バブル解の定性的性質の研究 (4)多重バブル解の爆発集合の特徴付けに関する未解決問題の解明 本年度、研究代表者の高橋は、2次元円環領域上のリウビル方程式の2点爆発解の爆発点の位置決め問題についての論文を完成させ、学術雑誌に投稿、掲載受理された(ローマ大学 M. Grossi との共同研究、Comptes Rendus Acad. に掲載予定)。これは「2次元円環領域上のN点爆発解は、正N多角形の頂点上で凝集・爆発を起こす」という予想のもっとも簡単な場合の肯定的解決であるが、この結果の一般化にはさらに困難が予想され、目下のところ解決への糸口が見いだせていない。結果はべき型方程式で非線形指数を無限大にする場合にも正しいと考えられ、現在検証中である。また、高橋は非線型ノイマン境界条件付きの線形楕円型方程式の解空間構造にも興味を持ち、研究を推進した。得られた結果は既に2本の論文にまとめられ、掲載受理されている。このほかに単著1本、4次元リウビル方程式の漸近的非退化性に関する共著1本(大塚浩史氏との共同研究)を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、研究代表者の高橋は、北京師範大学での2回の集中セミナー講演を含め、6回の海外講演、Pacific RIM Conference, the 3rd Italian-Japanese workshop などの大型国際研究集会を含め6回の国内講演を行っており、研究成果発表は充分である。また、掲載済み論文5編のほかに、掲載予定論文3編、投稿中論文2編の作成にあたった。 多重爆発解の定性的性質の研究は、2次元リウビル方程式の場合に先行しているが、このうちの多くは、2次元べき型方程式の場合にも成り立つと考えられる。しかし現在のところ、技術的な問題から十分な結果を得るに至っていない。研究計画最終年度となる次年度での解決を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2次元リウビル型方程式については、Grossi-Suzuki-Ohtsuka によって多重爆発解の「漸近的非退化性」が示されている。この漸近的非退化性は、方程式の主部を4階の重調和作用素にしたときにも、少なくとも Navier 境界条件の下では成立すると予想されるが、現在のところ、大塚浩史氏との共同研究では、これよりも弱い主張しか得られておらず、何らかのブレークスルーが必要である。研究計画最終年度の最大の研究課題としたい。高橋は、本年7月にマドリッドで行われる大規模国際研究集会 10th AIMS において、石渡通徳氏(大阪大学)、和田出秀光氏(金沢大学)、B. Ruf 氏(ミラノ大学)と協力して「変分法と実関数論」と題する Special Session を組織するが、この研究集会に参加する研究者たちとの討議・議論を通じて何らかのヒントをつかみたいと考えている。 また、高橋が主催する「南大阪応用数学セミナー」にも関連する研究者を積極的に招聘し、批判・助言を仰ぐ予定である。
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