研究課題/領域番号 |
23340039
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
神保 道夫 立教大学, 理学部, 教授 (80109082)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フェルミオン構造 / 相関関数 / 可積分場の理論 / 量子トロイダル代数 |
研究概要 |
研究代表者らのグループは量子可積分系における局所場の空間の「良い」基底の構成に取り組んで来たが、現在の代数的枠組みはスピン1/2表現の特殊性に強く依存している。 本年度の研究ではより普遍的な構成を探るための第1歩として、スピン1の格子模型の考察に着手した。スピン1/2のフェルミオン生成演算子のfusion を定式化し、フェルミオン4個およびボゾンの3つ組(カレント代数)の生成演算子を構成した。これらを用いて生成される局所場の基底は双対rqKZ方程式を満たし、スピン1/2の場合の自然な拡張になっている。他方、スピン1の消滅演算子の構成については(2組のフェルミオンは得られているが)未解決課題として残っている。この研究については、現在論文を投稿中である。 量子トロイダル代数の研究では、gl(N)トロイダル代数の完備化の中にgl(m)x gl(N-m) 型の量子トロイダル部分代数が存在することを示した。さらにFock表現のgenericなテンソル積をgl(N-1) x gl(1) 型の部分代数に制限したときの分岐則を決定した。これを反復することで通常のgl(N)代数におけるGelfand-Tsetlin 基底のトロイダル版類似が得られる。この結果についても論文を投稿中である。 また最近Lisovyyらにより、中心荷電c=1の共形場理論の相関関数とVI型パンルヴェ方程式のタウ関数が等価であるという発見が報告されている。共形場理論の立場から、その機構の解明を行った(ただし、その後同じ内容の論文がLisovyyらによって発表された)。その自然な拡張としてトロイダル代数を利用したq差分版の研究を行ったが、発表できる結果には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の甘い見通しに反し、スピン1の模型におけるフェルミオン基底はずっと複雑であった。生成演算子にあたるものはfusion構成法で得られたが、いまだに消滅演算子の構成は得られていない。またスピン1/2に比べて高スピンのモデルではベーテ根に関する知見が乏しいことが災いして、連続極限の解析には見通しがたっていない。
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今後の研究の推進方策 |
スピン1のモデルについて連続極限の解析を継続する。またスピン1/2の場合も含め、共形場理論における基底の存在を数学的に示すためには運動の保存量の代数的理解を進める必要がある。やや迂遠かも知れないが、量子トロイダルgl(1)代数(これはVirasoro代数のq類似を含む)の観点から運動の保存量を研究する可能性を探る。 これらと並行して総合報告の執筆を進める。
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