研究課題/領域番号 |
23340040
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松元 亮治 千葉大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00209660)
|
研究分担者 |
花輪 知幸 千葉大学, 先進科学センター, 教授 (50172953)
廣瀬 重信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 主任研究員 (90266924)
町田 真美 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (50455200)
根來 均 日本大学, 理工学部, 准教授 (30300891)
|
キーワード | 理論天文学 / X線天文学 / 磁気流体力学 / 降着円盤 / 宇宙ジェット / ブラックホール / 幅射流体力学 / 数値天体物理学 |
研究概要 |
理論シミュレーション分野と観測分野の連携によって「ブラックホール+降着円盤」系における降着率変動に伴う状態遷移過程の全貌を明らかにすることを目的として、(1)輻射磁気流体シミュレータ改訂班、(2)シミュレーション実施・可視化・データ解析班、(3)X線観測連携班による研究を実施した。輻射磁気流体班では輻射輸送方程式の角度方向に関する1次モーメント式を用いて輻射流束の時間発展を陽的差分法によって解くモジュールを実装してテスト計算を実施し、降着円盤の3次元輻射磁気流体計算に適用する準備ができた。シミュレーション班では円盤ダイナモの3次元磁気流体シミュレーションを実施し、方位角方向の平均磁場が準周期的に反転すること、赤道面に関して対称な状態と反対称な状態間を遷移すること等を明らかにした。また、光子輸送のモンテカルロ計算を行って輻射スペクトルを求めるモジュールを実装し、ブラックホールへの超臨界降着の輻射流体シミュレーション結果に適用した。その結果、回転軸付近の低密度領域と降着流の境界に生成される衝撃波加熱領域における逆コンプトン散乱によって10keV以上の冪スペクトルが形成されること、降着率がさらに高い場合には円盤からの低温アウトフローでのコンプトン散乱によって5keV以上の成分が弱くなること等が明らかになり、超高光度X線源(ULX)で観測されている光度(降着率)と輻射スペクトル変化の関係を再現することができた。観測との連携については2011年8月に北海道大学で開催された滞在型ワークショップ「全天体形成」の第1週「コンパクト天体・活動銀河(オーガナイザー:松元)」において集中的な議論を行い、輻射磁気流体計算を通して説明すべき観測事実を明確にした。MAXIや「すざく」による観測結果についても随時、情報交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次モーメント法に基づく輻射磁気流体コードの並列計算機への実装、低振動数準周期変動(QPO)の一因となる円盤ダイナモの3次元磁気流体計算、シミュレーション結果に基づく輻射スペクトル計算コードの実装等において成果が得られている。理論と観測の連携も強化され、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
東京大学情報基盤センター等に1PFLOPSクラスの超並列計算機が導入されて従来の10倍以上の計算量のシミュレーションが可能になり、円盤全体を計算領域とする大局的な3次元輻射磁気流体シミュレーションを実施できる環境が整った。この機会を活用して、高い並列性能が得られる1次モーメント法に基づく3次元輻射磁気流体シミュレーションを世界に先駆けて実施し、降着率変動に伴うブラックホール降着円盤の状態遷移過程を解明していく。平成24年度中に明るいハードステートからソフトステートへの遷移のシミュレーションを実施する計画である。
|