研究課題/領域番号 |
23340040
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松元 亮治 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00209660)
|
研究分担者 |
根來 均 日本大学, 理工学部, 准教授 (30300891)
花輪 知幸 千葉大学, 先進科学センター, 教授 (50172953)
町田 真美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50455200)
廣瀬 重信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 主任研究員 (90266924)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 理論天文学 / X線天文学 / 降着円盤 / 磁気流体力学 / シミュレーション / ブラックホール / 宇宙ジェット / 潮汐破壊 |
研究概要 |
理論シミュレーション分野と観測分野の連携によって「ブラックホール+降着円盤」系における降着率変動に伴う状態遷移過程の全貌を明らかにすることを目的として、(1) 輻射磁気流体シミュレータ改訂班、(2) シミュレーション実施・可視化・データ解析班、(3) X線観測連携班による研究を実施した。 輻射磁気流体班では輻射輸送方程式の角度方向に関する1次モーメント式を用いて輻射流束の時間発展を陽的差分法によって解くコードの数値的安定性を改善し、このコードを用いた超臨界降着流の輻射磁気流体計算を開始した。シミュレーション実施班では輻射冷却を考慮した降着円盤ダイナモの3次元磁気流体シミュレーションを実施し、冷却不安定性の成長に伴う鉛直方向への円盤収縮によって強められた方位角磁場とブラックホール近傍の高温領域で準周期的に反転するダイナモ磁場がリコネクトすることにより、準周期的な円盤加熱とジェット噴出が発生することを明らかにした。この円盤加熱はソフトステートへの状態遷移を遅らせ、明るいハードステートを維持する機構になる。 観測との連携については2011年3月に発生した巨大ブラックホールによる恒星の潮汐破壊と考えられる事象(Swift J1644+57)についての共同研究を進め、輻射流体シミュレーション結果に基づいて2012年8月に観測された急激な減光を超臨界状態から亜臨界状態への状態遷移によって説明するモデルを提唱した。より長時間の数値実験を実施した結果、2013-2014年にX線強度が再増光する可能性があることが判明したため、再増光時にChandra 衛星等でこの天体を観測する提案を共同で提出した。2013年後半に我々の銀河系中心ブラックホールに接近するガス雲の磁気流体数値実験も開始した。 研究成果は国際天文学連合(IAU)シンポジウム等でも発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輻射冷却を考慮した高精度の3次元磁気流体計算によってハードステート円盤への降着率が増加して冷却不安定性が発生した後のブラックホール降着流の時間発展を追跡することが可能になった。その結果、磁気エネルギーが準周期的に解放されて円盤を加熱することが示され、ハードステートからソフトステートに遷移中のブラックホール候補天体で観測される様々な現象を説明できる見通しがついた。巨大ブラックホールによる恒星の潮汐破壊と考えられる事象Swift J1644+57についてX線観測グループとの共同研究を実施し、輻射流体シミュレーションによる再増光予測に基づいて観測提案を提出するという進展があった。1次モーメント法に基づく3次元輻射磁気流体計算については数値的安定性が改善され、現象論的なα粘性を仮定しないシミュレーションに向けて準備が整いつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
輻射冷却を考慮した3次元シミュレーション結果の解析を進め、ブラックホール候補天体がハードステートからソフトステートに状態遷移する際に観測される準周期的光度変化やジェット噴出のメカニズムを明らかにして論文にする。潮汐破壊事象Swift J1644+57の輻射流体シミュレーション結果を出版するとともに、Swift衛星等によって再増光が検出された際に様々な波長域での観測ができるように観測グループとの連携を強化する。銀河系中心ブラックホールへのガス雲落下についてもシミュレーション結果に基づく様々な波長域での増光予測を行う。1次モーメント法に基づく3次元輻射磁気流体コードを「京」コンピュータに実装してα粘性を仮定しない計算を実施し、これまでαモデルに基づいて実施してきた輻射流体計算結果がどの程度妥当であるかを明らかにしていきたい。
|