研究課題
平成24年度に超伝導マグネットの周りの磁気シールドを改良して,超伝導遷移端温度計(TES)の転移温度幅が4 mKに,センサ(TES型X線マイクロカロリメータ)のエネルギー分解能は5.9 keVのX線に対して約16 eVにまで改善したことを報告したが,平成25年度はさらなるセンサ性能の改善に取り組んだ。主な改善点は以下の通りである.まずEMC対策として,クライオスタットと駆動装置・計測装置のグラウンディング,それらをつなぐハーネスのシールディングの方法とその施行を一から見直した。これにより,読み出し系のノイズのスペクトルにおいて特定の周波数をもった成分が抑制され,ノイズのRMS値も半分程度に抑えられた。ファラデーケージにすることで外部からのノイズを遮断すると同時に,配線間のクロストークが抑えられたことで改善したと考えられる。また,センサの周りの磁気シールドについて,超伝導体と強磁性体の組合せの順番を変更して,性能がどのように変化するかを調べた。その結果,内側を超伝導体,外側を強磁性体にする方が,若干性能がよくなる傾向が見られることがわかった。以上のような改善を積み重ねることによって,最終的に5.9 keVのX線に対して6.6±0.3 eVのエネルギー分解能を実現することができた。使用した素子は希釈冷凍機での測定で5.6 eVのエネルギー分解能を持つことがわかっており,まだ若干改善の余地は残されているものの,自作断熱消磁冷凍機上でTES型X線マイクロカロリメータを動作させてほぼ希釈冷凍機に匹敵する分光性能を実現できた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Low Temp. Phys
ページ: 7
10.1007/s10909-013-1005-4