研究課題
太陽フレアやコロナ質量放出(CME)などの太陽面爆発が発生する条件として2種類の特徴的な太陽面磁場構造があることをコンピュータシミュレーションを通して明らかにし、論文(Kusano et al. 2012)として発表した。このモデルでは活動領域の磁気シアとその内部に現れる小規模な磁場構造の相対方位角がフレア発生にとって重要な要件となることを提案している。この理論的な予測を実証するため、SOHO衛星、ひので衛星、SDO衛星による太陽表面磁場観測データを精密に解析し、これまでにフレアが発生した活動領域の磁場構造がその条件を満たすかどうかを調べた。その結果、解析した4つの大型フレア全てにおいて、予測された磁場構造がフレア領域に存在することを確認し、論文(Bamba et al. 2013)として報告した。また、それらのフレア領域のうち活動領域NOAA11158について、フレアのトリガとなった小規模磁束の形成過程を詳細に調べた。その結果、フレアに至る数時間前から小規模の磁束集積が繰り返された結果として、フレアトリガ構造が形成されたことを突き止めた。このことは大規模フレアの発生に小規模磁場の輸送が関与することを示す初めての発見である。その成果についても論文(Toriumi et al. 2013)として報告した。さらに、日韓共同研究を通して、SOHO衛星のデータ解析を進め、同衛星で観測された複数のフレア領域における磁場構造が我々の予測と整合することも見出し、論文(Park et al. 2013)として報告した。さらに、フレアを発生し得る強いシア磁場を持つ活動領域の形成過程についてコンピュータシミュレーションを用いて探ると共に、ひので衛星とSDO衛星のデータを定量的い比較することにより、分解能は劣るが太陽全球を観測するSDO衛星データを用いたフレアトリガ領域の解析に関する予備的研究を実施した。
1: 当初の計画以上に進展している
詳細なコンピュータシミュレーションによりフレア発生に必要な太陽表面磁場の構造を明らかにすると共に、SOHO、ひので、SDOなどの衛星によって観測された多くのフレアイベントについてその発生領域の磁場構造を解析し、理論的予測に一致することを明らかにした。これによって、本研究計画の主要な2つの目的①フレア発生条件の解明と②その予測可能性の実証のうち、①をすでに達成した。また、得られた研究成果について論文化し、その多くをすでに出版した。
昨年度までの成果を拡張し、以下の研究を推進する。①太陽表面磁場のデータをスケールの異なる2つの成分に分離すると共に、それぞれのシア角からフレア発生条件を自動判別するアルゴリズムを開発し、複数の活動領域に適応する。これにより、磁場観測よりフレア発生を予測する可能性を調べる。②観測磁場を境界条件とするシミュレーションを実施し、これまでに見出されたトリガ機構が観測されたフレアを発生させ得るかを検証する。③極端紫外線の観測データよりフレア発生以前のコロナプラズマの構造変化を探り、フレア発生の前兆現象を明らかにする。④フレア発生からCMEの形成までをシミュレーションで再現し、トリガ過程がCMEの構造にどれほど影響するかを明らかにする。⑤フレア発生後の太陽面磁場の変化がフレアとどう関係するかを観測データとシミュレーションの比較から明らかにする。特に、フレアによって部分的に太陽表面の磁気シアが強くなる現象のメカニズムを解明する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 8件)
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