研究概要 |
宇宙の星形成史は宇宙開闢以来の重元素合成史の解明に本質的に重要である.本研究ではこれまで星,ダスト放射のみを扱っていた銀河のスペクトル進化モデルを,星間ガスの多相モデル及び力学を導入することで,全体がガスの状態の原始銀河から大半が星に転化した現在の銀河まで,あらゆる銀河年齢に対応するモデルに拡張する.また本研究期間中に得られるHerschel等の観測データを用いてモデルを徹底検証・改良することで,宇宙暗黒時代から現在まで適用可能な銀河のSEDモデルを構築する.これを用い,来るべきz>6-10(宇宙年齢10億年以下)の観測計画(JWST,ALMA,SKA)等への予言を行うことが目的である. 23年度はまずデータとの比較のため,私がメンバーとして参加しているHerschel宇宙望遠鏡による550平方度の広域サーベイH-ATLASおよび紫外-近赤外線サーベイGAMA (Galaxy And Mass Assembly)のデータによる赤外・紫外線光度関数の構築を行った.この成果は国際会議で発表し,論文も投稿して好意的な査読報告を受け取った段階である.ダストの散乱過程については,まず減光曲線の計算が終了し,論文として発表できる段階まで達している. 次にダスト進化へのガスの多相モデルの導入についても,星間物質の多相(高温ガス,低温中性ガス,分子ガス)の物理を理論に取り入れ,それぞれの中で異なったダスト成長と破壊過程が進むことを正しく考慮した理論モデルの構築に成功した.この結果は日本天文学会で発表済みである.
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