研究概要 |
宇宙の星形成史は宇宙開闢以来の重元素合成史の解明に本質的に重要である. 本研究ではこれまで星, ダスト放射のみを扱っていた銀河のスペクトル進化モデルを, 星間ガスの多相モデル及び力学を導入することで, 全体がガスの状態の原始銀河から大半が星に転化した現在の銀河まで, あらゆる銀河年齢に対応するモデルに拡張する. また本研究期間中に得られるHerschel等の観測データを用いてモデルを徹底検証・改良することで, 宇宙暗黒時代から現在まで適用可能な銀河のSEDモデルを構築し, 次世代観測への予言を行うことが目的である. 25年度は前年度に引き続き、ダスト粒子のサイズ進化モデルの発展について大きな進展がった. 銀河中の重元素の進化は化学進化によって記述されるが,重元素の固体微粒子であるダストの進化に応用するには, 様々な星間物理を考慮する必要がある. 我々は星間物質の多相(高温ガス,低温中性ガス, 分子ガス)の物理を取り入れ, それぞれの中で異なったダスト成長と破壊過程が進むことを正しく考慮したうえで、全銀河年齢100億年にわたって適用できる自己整合的な理論の構築に世界で初めて成功した. これを応用し, 紫外線から可視光線でのダスト粒子による輻射の減光曲線の理論を構築した. この成果についての論文も学術雑誌に受理済みである。これを発展させ、ダスト放射を扱うモデルに適用する試みを進めている。 上記の減光曲線の進化モデルを検証するため, 高赤方偏移銀河の減光曲線を求める観測的研究を開始し, 初期成果は国際会議にて発表した。現在はより詳細な解析結果を得ており、論文を執筆中である, また長波長の究極の電波観測装置計画であるSKAへの応用のため, 銀河の星形成率, 全バリオン質量, 全質量の間に成り立つ新しい経験則を発見し, いくつかの国際研究会にて報告した。これをさらに推し進めるための観測提案も行っている。
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