研究課題
宇宙の星形成史は宇宙開闢以来の重元素合成史の解明に本質的に重要である. 本研究ではこれまで星, ダスト放射のみを扱っていた銀河のスペクトル進化モデルを, 星間ガスの多相モデル及び力学を導入することで, 全体がガスの状態の原始銀河から大半が星に転化した現在の銀河まで, あらゆる銀河年齢に対応するモデルに拡張する. また本研究期間中に得られるHerschel等の観測データを用いてモデルを徹底検証・改良することで, 宇宙暗黒時代から現在まで適用可能な銀河のSEDモデルを構築する. これを用い, 来るべきz > 6-10 (宇宙年齢10億年以下)の観測計画(JWST, ALMA, SKA等)への予言を行うことが目的である.H26年度は前年度に引き続き、ダスト粒子のサイズ進化モデルについて大きな進展があった。銀河中の重元素量の進化は化学進化理論によって記述されるが、重元素の固体微粒子であるダスト粒子の進化に適用するには様々な星間物理過程を整合的に考慮する必要がある。我々は星間物質の多相(高温ガス、低温中性ガス、分子ガス)の物理を取り入れ、銀河年齢100億年全ての範囲にわたって適用できる自己整合的な理論の構築に世界で初めて成功した。この結果を我々の銀河系や近傍銀河、クェーサーのダスト減光曲線の最新の観測に応用し、これを再現することに成功した。この結果は2本の学術論文として公表済みである。この新理論はダスト進化を越え、新しい応用的側面が発展している。現在ALMA望遠鏡などによる超遠方銀河のガス量を観測的に求めるために、ダスト量とガス量の経験的相関によって換算する方法が用いられている。しかし、我々の理論はこの関係が遠方銀河のような化学進化の進んでいない系では破綻することを示している。我々はこれを整合的に求め、まず観測データの揃っている中間赤方偏移の銀河の星間物理の観測に応用する計画を立て、これを推進している。これはALMAとSKAをつなぐ研究として期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
銀河のダスト進化理論は発表から1年半ですでに世界標準の理論としての地位を確立し、30回近く引用され、発表誌Earth, Planets & Spaceの論文賞を受賞した。観測的応用も世界の研究者から続々とされており、新しい共同研究のオファーも殺到している。ALMA、SKAへの応用という目標にも現時点で到達しており、予想以上の成果と言える。
ダストの多相進化理論の宇宙論的発展が新しい方向性として明確になり、また観測的応用も多岐にわたって発展してきている。輻射への応用も当初とは別の観点から、電波観測との関連および宇宙マイクロ波背景放射の前景放射理論としての応用ができることが判明し、本年度はこの方向性の研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 2件)
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