研究課題
初期宇宙の銀河中心で超巨大ブラックホールが誕生する瞬間を捉え,超新星残骸や銀河団などの宇宙大規模高温プラズマの衝突によって起こる高エネルギー粒子加速を探査するためには,微弱な天体の硬X線精密分光撮像が必要である.従来の検出器では,分光能力の不足や衛星軌道上の放射線による高いバックグラウンドが問題となり,その実現が阻まれていた.そこで私たちはSOI(Silicon-On-Insulator)技術を応用した日本独自のアナログ・デジタルICと厚いX線検出部を持つ一体型シリコンピクセルSOI検出器「X線SOIPIX」でこの困難を打ち破り,ワイドバンドX線分光撮像天文学を開拓する.今年度は下記の成果を得た.(1)ピクセル間クロストーク:隣り合うピクセル間のクロストークは 0.2 - 0.5%と分かった.理想エネルギー分解能に対して十分小さく,性能に影響を与えない事がわかった.(2)中型素子 XRPIX2-CZの開発:XRPIX1/1bの撮像領域1mm角から4mm角を持つ素子XRPIX2の開発に成功した.基本的な動作確認を行った後に,下記に示す開発研究に供した.(3)XRPIX2-CZによる撮像領域とピクセルサイズ拡大の効果の研究:撮像サイズの大型化(1mm→4mm角)に伴う性能変化(劣化)は見られないことがわかった.単純なピクセルサイズの拡大では,チャージシェアリング効果が減少し,シングルピクセルイベントが増加する.一方でピクセル内部の電荷収集効率が下がる.ピクセル内電荷収集ノード数を増やすと,電荷収集効率は上昇するがゲインが下がる.(4)イベント駆動読み出し:レーザーを用いた検証実験等を行ったところ,トリガ回路にラッチが必要である事がわかった.(5)次年度の開発に向けた準備:XRPIX2b,新FZウェハ,ピザプロセス,XRPIX3の準備を行った.
1: 当初の計画以上に進展している
今年度はピクセル間クロストーク,中型素子 XRPIX2-CZの開発,XRPIX2-CZによる撮像領域とピクセルサイズ拡大の効果の研究,イベント駆動読み出し,α線を用いたX線発生装置の開発を行い,次年度に向けてXRPIX2b,新FZウェハ,ピザプロセス,XRPIX3の準備を行った.いずれも計画以上に進展している.
次年度は(1)撮像領域サイズとして敷き詰め可能なXRPIX2bの試験,(2)ウェハとして新FZの導入と,ピザプロセスによる裏面からの暗電流低下.(3)アナログ部として各ピクセルに電荷有感アンプを設ける.(4)デジタル部としてヒット回路の改良とイベント駆動読み出し機能の強化を行う.
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http://www-cr.scphys.kyoto-u.ac.jp/member/ryu/html/SOIPIX.html