研究課題/領域番号 |
23340048
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川端 弘治 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (60372702)
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キーワード | 光学赤外線天文学 / X線天文学 / 偏光 |
研究概要 |
HONIRの光学系にマッチしたウォラストンプリズムとと無色半波長板を開発し、装着することが平成23年度の主な目標であった。しかし、平成23年7月、開発中の観測装置の光学レンズ系の調整で予定外の不具合が発生したため、光学素子の設計を見直すこととなり、ウォラストンプリズムの設計が遅延した。これを受けて財源の一部を次年度に繰り越し、平成24年度に購入することにした。設計は光学ソフトウェアZEMAXを用いて既に完了しており、それに伴うメーカーの金額と納期の見積もりも得ている。また、もう一つの主要光学素子である無色半波長板については、当初は本科研費を充てる予定であったが、配分額が減額になったため、別財源で購入することとなった。 平成23年度は、これに加え、偏光較正素子の導入、HONIR本体のレンズ光学系の調整と改修、光学素子切り替えの駆動機構の開発、光学素子を実装するためのホルダーの設計と製作、冷却試験、および制御ソフトウェアの改修などを行った。また、10月から平成24年2月に掛けて2回、HONIRを1.5m望遠鏡へ取り付けて撮像モードの試験観測を行った。可視光チャンネルでは概ね仕様通りの検出効率を達成していることが判った。 また、既存装置HOWPolによるジェット天体、具体的にはガンマ線バーストGRB 20111228Aや明るいブレーザー天体数個の偏光観測を行った。GRB 20111228Aについては、ガンマ線トリガーから1000-10000秒後の、過去に例のない偏光変化の観測に成功することができた。HONIRが立ち上がれば、可視と近赤外線で同時に、より高い精度での偏光観測が行えると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発中の観測装置の光学レンズ系の調整において不測の事態が生じたため、光学素子の設計を見直したことで、ウォラストンプリズムの設計が遅れ、その手配が遅延した。また、広帯域半波長板は交付額の減額を受けて別財源を充てて次年度に購入することとした。 それ以外の開発項目、すなわちHONIR本体の光学系や駆動系、冷却系の改修は順調に行われた。HONIRを1.5m望遠鏡へ取り付けての試験観測も10-11月と12-2月の計2回行われ、可視近赤外線同時観測が特に問題なく実行可能であることが確認された。これにより、上記のウォラストンプリズムと半波長板が導入され次第、予定している可視近赤外線同時偏光観測が可能となる見通しが得られた。 既存装置による可視光のジェット天体の偏光観測は、ガンマ線バーストや活動銀河核(ブレーザー)に対して定常的に行っており、興味深いデータが蓄積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本計画の主要光学素子であるウォラストンプリズムおよび無色半波長板の手配に万全を尽くし、可視赤外線同時偏光観測のなるべく早い実現へ向けて一層努力する。2つの素子とも24年度中に手配が完了する見込みである。 また、HONIRによる可視近赤外線同時偏光観測モードが立ち上がるまでは、活動銀河核やガンマ線バースト、X線連星に対する既存装置による可視光の偏光モニターを継続して行う。興味深い結果が得られた場合は、速やかに論文化を目指す。
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