ハンレ効果により生ずる水素のライマンアルファ線の直線偏光を検出することで太陽彩層磁場を測定するという新たな手法による観測が計画されているが、この研究ではそれに必要とされる凹面回折格子を開発することを目指している。もともとの計画では、海外光学メーカーでの製作を予定していたが、採択額の減額によりその解はなくなった。このため、この波長域では発展途上の国内光学メーカーとともに開発することにチャレンジする。平成23年度は11月時点での課題採択であったことから、主として次年度の凹面回折格子製作の準備に充てた。具体的には、製作する凹面回折格子の仕様決め、性能測定に必要な光源や測定系の準備、回折格子に塗布するコーティング評価である。平成24年度に製作する凹面回折格子の曲率半径は1749mm、溝本数は3600本/mmで、観測波長である121.6nmの真空紫外線を高い効率で反射するAl+MgF_2コーティングを施す。回折格子として機能するエリアとしてφ100mm程度の領域内を想定しているが、製作を依頼する光学メーカーとの打ち合わせの結果、どの程度まで広域化が可能かを事前評価するため、溝形成条件の容易な平面回折格子を前段階で製作することを予定している。また、凹面回折格子の波長分解能評価の手法確認のため、別プログラムで開発した曲率半径1121mm、溝本数2400本/mmの凹面回折格子に対して重水素ランプを光源とした測定を実施した。この光源は121.6nmの輝線自身の線幅が幾分広めであることや連続光成分が放射されるため、平成24年度にはホローカソードランプを使用した光源を製作する。この他、製作を依頼する光学メーカーより厚さの異なるAl+MgF_2コーティング付きのミラーサンプルの提供を受け、分子科学研究所のシンクロトロン光で121.6nmでの反射率を測定して、コーティングの最適化条件を探った。
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