研究課題/領域番号 |
23340054
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石塚 成人 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70251030)
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研究分担者 |
宇川 彰 筑波大学, 副学長 (10143538)
吉江 友照 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40183991)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | K中間子崩壊振幅 / 格子場の理論 / 素粒子標準模型 |
研究概要 |
本研究の目的は、K中間子崩壊振幅を格子QCDにより計算し、素粒子理論において未解決問題であるΔI=1/2則の研究、および CP非保存パラメータを標準模型から求めることである。平成23年度に行った非連結ダイアグラムの計算法の開発をうけ、平成24年度は崩壊振幅の計算を行った。計算は、PACS-CSグループにより生成され公開されているゲージ配位を用いた (格子サイズ L=3fm、格子間隔 a=0.097fm、π中間子質量 m=300MeV)。 崩壊振幅の計算により、非連結ダイヤグラムの統計誤差が非常に大きく、崩壊振幅を精度よく求める事が困難であることが判明した。そこで、PACS-CSグループにより生成されたゲージ配位を種に更に配位を生成し、配位数を4倍にした。また、非連結ダイグラムには クォーク ループが伴うが、それが大きな誤差を生むと考えられた。そこで、その部分に対し、ホッピング パラメータ展開法(HPE法) と、truncated solver法(TS法) を用いて、統計誤差を押さえることを試みた。両方とも劇的な改善がみられ、統計誤差は 1/10程度まで小さくできることが分かった。 崩壊振幅での2体π中間子の演算子は、ππ - <ππ> の形をしており、真空期待値 <ππ> を差し引く必要がある。非連結ダイヤグラムの大きな統計誤差は、この差し引きの部分から発生していることが分かった。そこで、系全体が有限運動量を持った場合を考えた。この場合は真空期待値の差し引きは必要なく、統計誤差が小さくできると予想した。しかし、実際に数値計算を行ってみると、統計誤差の大きさは殆ど変わらず、有限運動量を考えた効果は殆どないことが判明した。以上の研究結果を受け現在は、系が運動量を持たない場合に戻し、劇的な改善がみられた二つの方法 (HPE法,TS法) を使って、高統計の計算を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小さい体積かつ重いクォーク質量で行った他のグループの先行研究があった。クォーク作用が本研究のものと異なるが、統計精度の大きさの程度は、さほど変わらないと推測し、本研究で採用する計算方法を考えた。しかし、実際に計算を行ってみると、先行研究の結果よりも、非連結ダイアグラムの統計揺らぎが遥かに大きい事が判明した。これがクォーク作用の違いによるものか、クォーク質量が小さいことによるものかは未だ理解できていない。そのため、統計誤差が押さえる為にいくつかの計算方法を新たに付け加え、その方法が有効であるのか実験する必要が出てきた。それにかなりの計算時間を要してしまい、当初計画したものより、やや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
前述の様に、かなりの時間を崩壊振幅の計算方法の開発にとられ、研究はやや遅れている。遅れを取り戻す為に、有料の計算リソースを新たに申請した。既に採択されており、平成25年4月から順調に計算が行われている。また、平成24年に 京computerの一般利用に採択され、平成24年9月から 京computerを用いた計算を開始した。平成25年度はこれらの計算リソースにより研究推進が加速が見込まれる。
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