研究課題/領域番号 |
23340056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩澤 真人 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (70272523)
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研究分担者 |
早戸 良成 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (60321535)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / 大気ニュートリノ / 対称性の破れ |
研究概要 |
平成24年度は加速器と原子炉ニュートリノ振動実験により、最後の未知混合角が測定されるという、大きな展開があった。本研究で行う大気ニュートリノ研究では、同じ混合角の検証を行い矛盾しない結果を得た。同時に三世代ニュートリノの質量の順番の解明を目指した検証を行った。これは、太陽ニュートリノ振動に関わる一番目と二番目のニュートリノ以外の三番目のニュートリノの質量が他のニュートリノに比較して重いか軽いかという問題である。原子炉で測定された混合角を既知のものとして、解析を行い、どちらのシナリオもデータと矛盾しない事がわかった。さらにニュートリノの粒子・反粒子対称性の破れの検証を行った。最もデータを良く説明する破れのパラメータの値は270度から300度(三番目のニュートリノの質量に依存する)であるが、信頼度90%では全ての値がまだ許されることがわかった。今後解析の改善を行うとともに、データの統計を増加して、検証感度を向上させていく。 一方水チェレンコフ検出器の未来開拓として、安価で高性能な新光検出器の開発を行った。検出器の照射面(光電面)の感度を現行光検出器の約25%というものから30%以上に約3割の向上を達成し、その試作品を製作した。さらに検出器の心臓部に半導体検出器を用いた新型光検出器の基礎開発も並行して行い、試作品を製作した。ここまで致命的な問題点は見つかっておらず、今後詳細な性能試験や設計改善を平成25年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニュートリノの粒子・反粒子対称性(CP とCPT 対称性)の破れの実験的研究の達成度 80% 高精度化を目指した水チェレンコフ実験装置のアップグレードのための開発研究 120%
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今後の研究の推進方策 |
大気ニュートリノ単独での振動研究と共に、加速器ニュートリノと原子炉ニュートリノの測定結果を合わせた総合解析により、CP 対称性の破れの探索結果をまとめる。大気ニュートリノ解析では、開発中の新しい事象再構成アルゴリズムを本研究に投入する。これにより、電子型ニュートリノの測定に対する背景事象の主要な原因である中性カレント反応の除去率を改善する。また平成25年度夏までのデータを追加する。 一方でニュートリノ振動における対称性の破れの研究の、将来の高精度化を目指し、現在使用中の光センサーを30%程高感度化した新光センサーを、水タンクに取り付けて、基礎特性の測定を行う。時間測定精度、増幅率や電荷測定精度、ノイズ頻度、さらにそれらの経時変化(安定性)を確認し、将来の実験での使用可能性を示す。また本光センサーを用いた場合の、ニュートリノ事象観測精度や対称性の破れの測定感度等を計算機シミュレーションを用いて明らかにする。
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