研究課題/領域番号 |
23340060
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
早戸 良成 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (60321535)
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研究分担者 |
鈴木 聡 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 准教授 (50280508)
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キーワード | 超新星 / ニュートリノ / スーパーカミオカンデ / データ収集システム |
研究概要 |
平成23年度は、PMT同時ヒット数常時記録用モジュールの開発を行った。本モジュールによりスーパーカミオカンデ内でのPMTの同時ヒット数を完全に独立したシステムで常時観測し、近傍での超新星爆発時等、主データ収集システムで全ての情報を記録できない場合にも、検出器内で発生した事象の数を見積もることのできるシステムを構築することができる。本モジュールは平成22年度にプロトタイプの開発を開始し、PMTの同時ヒット数の平均値を算出する機能まで実装を行った。ここで超新星爆発時の詳細な時間変化を調べるために、ボードに搭載予定のメモリに一定時間データを蓄える機能を追加、超新星爆発前後各30秒間の全ヒット数データを記録、超新星爆発のニュートリノ放出の時間発展の詳細な理解を可能とすること、また、各ボード単位でも超新星らしさを判別する機能をもたせることを決め、FPGAをさらに高機能のものに変更、平成23年度中にFPGAの選択を含めた基板の回路新設計、二度目のプロトタイプ基板の製作を完了、平成24年度にボードを必要数製作した。 スーパーカミオカンデの通常のデータ収集システムにおいて、通常時はエレクトロニクスからのPMTの全情報を計算機で読み込み、事象候補をソフトウェアで選択してデータ量を減らし、ディスクに記録している。しかし、超新星爆発前後のデータについては、事象選択をおこなわず全てを記録することで、超新星爆発の発生前後の様子がより詳細に理解できる可能性があると指摘がある。よって、常時1分程度のデータを計算機のメモリに蓄え、超新星爆発が発生した可能性がある場合に、この全てのデータをディスクに記録するソフトウェアについて、主データ収集システムからデータを流す部分についてまで、主システムへの組み込みを行った。受信部分については主システムとの干渉をおこさないようにするための設計まで平成23年度に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度、PMT同時ヒット数常時記録用モジュールの開発を開始したが、本モジュールに機能を追加し、より詳細な情報を記録、解析に利用できるシステムとするため、回路の設計をやりなおすこととした。この開発も無事終了、ボード自体の基本動作の確認が取れた。そして、平成24年度中には本モジュールを必要数制作完了することができた。 主データ収集システムで取得している超新星爆発前後のデータを前後30秒分、すべて記録するソフトウェアについては、ほぼ予定通りに開発をすすめることができ、開発完了部分については基本的な動作を確認し、期待通りに動作することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
まずPMT同時ヒット数常時記録用モジュールについては、T2K実験の加速器運転状況をみながらスーパーカミオカンデに導入し、ボードの動作の最終確認を行う。特に、スーパーカミオカンデ内で試験用の光源を用い、人工的な光を用いてデータを収集、主データ収集システムからのデータと、本モジュールで取得したデータに齟齬がないかどうかを確認する。また、モジュール内のファームウェア(動作用ロジック回路)についても最適化を行う。 このとき、主データ収集システム側で超新星爆発前後のデータをすべて記録するソフトウェアも併用することで、上記試験を円滑に行うことができる。また、この「全データ記録」ソフトウェアについても、その動作を確認することが可能になる。 この後、超近傍の超新星爆発時と同じ程度の非常に高い頻度で光源を発光させ、そのときの振る舞いを確認、期待通りにデータを記録することができるか、また、異常な動作とならないかなどを確認し、定常的な稼動させることを目指す。
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