研究課題/領域番号 |
23340062
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大林 由尚 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (50345055)
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キーワード | ニュートリノ振動 / スーパーカミオカンデ / T2K実験 / 素粒子実験 |
研究概要 |
平成23年度は、震災により茨城県東海村の加速器が損傷したため、復旧までの約1年間T2K実験のニュートリノビームが停止したが、本研究では実験再開に向け、遠方検出器スーパーカミオカンデ(SK)において以下の改良を行った。 ・T2Kビームスピル情報のリアルタイム転送システム及びそのモニタシステムの整備 ニュートリノビームの発射時刻の情報を295km離れたSKに1秒以内に転送し、SKでのニュートリノ事象探索に使用するため、このシステムとそのモニタシステムを整備して実験の稼働率を100%に限りなく近く保てるようにした。 ・GPSによる時刻決定の検証 本年度はOPERA実験によるニュートリノ速度測定が話題になった。T2K実験でも原理的には同様の測定が可能であるがこれまでのところ時刻決定の系統誤差をニュートリノ振動研究のためには十分だが速度測定には不十分な程度までしか抑えていない。本研究では別予算で購入したコモンビュー装置を利用してSKの時刻決定を安定的に行えるように整備した。これにより、今後のニュートリノ事象に関して時刻決定の系統誤差を小さくできる。 ・レーザーダイオードを用いた検出器モニタシステムの整備 本研究のために購入したレーザーダイオード装置を用いて検出器の光電子増倍管の時間応答、増倍率のモニタを定常的に行うシステムの改善を行った。これにより、検出器の安定稼働、稼働率の向上が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災によりT2K実験はニュートリノビームが約1年間停止していたが、本研究の主対象の遠方検出器SKは順調に稼働しており、ニュートリノビーム再開に備え性能向上を行った。
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今後の研究の推進方策 |
T2K実験は平成23年6月に震災で停止する直前までのデータを用い、電子ニュートリノ振動探索の最初の結果を発表したが、これに触発されて世界のいくつもの競合実験が次々と結果を出すこととなった。T2K実験も再開後は可能な限り速やかに統計をあげ、新しい結果を出す必要が有る。本研究も予定通り推進し、遠方検出器由来の系統誤差を限りなく小さく抑えることでT2K実験の新たな結果を世界に先んじたものとすることに貢献する。
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