研究課題/領域番号 |
23340062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大林 由尚 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (50345055)
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研究分担者 |
小汐 由介 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80292960)
戸村 友宣 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60361317)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニュートリノ / T2K実験 / スーパーカミオカンデ / 素粒子実験 |
研究概要 |
本年度は、ニュートリノ振動実験の遠方検出器であるスーパーカミオカンデ(SK)の長期間安定稼働を確保し、実験が確実に進行出来るようにするため、本研究では検出器の最重要部のひとつである、光電子増倍管用の高電圧電源(12000チャンネル)を入れ替えるための準備を行った。 このために、新しく設置する高電圧電源の候補として挙げられた製品について、運用中の光電子増倍管に接続すること無く性能を確かめられるよう、光電子増倍管に近い特性を持つ模擬抵抗器(ダミーロード)を購入し、テスト用のシステムをくみ上げ、性能チェックを行った。同時に同高電圧電源システムを高速にコントロールし、安定して運用し、速やかに異状を検知出来るコントロールシステムを立ち上げ、テスト用システムを活用してこのコントロールシステムの運用テストも同時に行った。 これらの結果、新しい高電圧電源はハードウェア、コントロールのためのソフトウェアの両面において十分安定した運用ができることを確認した。 別経費で行った新しい高電圧電源システムの納入、設置後には、すべての高電圧チャンネルについて予定通りの高電圧が安定して供給出来ているかの確認を行った。また、接続した12000個近くの光電子増倍管について、予定通りの増幅率、時間特性が得られているかについても、本研究でこれまでに準備した較正システムを活用して確認を行った。 さらに、本研究でこれまでに準備したエネルギー再構成及び時間特性の安定性のモニターシステムを常時稼働させ、高電圧電源の入れ替えの前後において、検出器が十分安定して稼働していることをリアルタイムで確認を続けた。 これらの研究を通して、2013年7月に発表した「電子ニュートリノの出現の決定的証拠を明らかに」をはじめとする結果を出したT2K実験の進行を確実に進めることを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで使用していた光電子増倍管用の高電圧電源の故障率の経年劣化による増加が当初想定したよりも早く進行していることが明らかになったため、当初の予定より早く高電圧電源入れ替えを行い、本研究ではそのための準備、入れ替え後の性能確認を優先して行うこととした。従って、検出器のエネルギー再構成性能の改良の作業はその後に行うこととした。研究内容の順番が変わったが、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
検出器のエネルギー再構成の性能の究極的向上を行う。このためには、これまでにわかってきている検出器内での水質の時間的、空間的変化を再構成のためのコンピュータプログラムに取り込むこと、またこれらの変化をできる限り多くの箇所、時間でモニタ出来るための仕組みの確立を目指す。さらに、現在計画中の次世代の水チェレンコフ型検出器である、ハイパーカミオカンデの設計にこれまでの研究で得られた知見を生かせるよう、研究成果のまとめを行う。
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