研究実績の概要 |
本年度は当研究課題の最終年度である。これまで本研究で行ってきたスーパーカミオカンデの性能の向上について、達成された性能の最終確認のために、時間決定精度の精密測定、エネルギー測定の分解能の測定等を実際の宇宙線ミューオン、ニュートリノのデータと校正用の光源などを用いて行った。この結果、予定通りの性能を確保でき、安定して運用できていることを確認した。また、今後も長期間にわたって安定した稼働が続けられる様取得データのモニタリングシステムをさらに整備した。 本研究の成果が大きく生かされ、本年度はT2K実験、スーパーカミオカンデ実験から、 "Observation of Electron Neutrino Appearance in a Muon Neutrino Beam"(ミュー型ニュートリノビームによる電子型ニュートリノの出現の観測), Phys. Rev. Lett. 112 (2014), 061802, を始めとする多くの論文が出版された。 また、電子ニュートリノ出現が確かなものであるとの研究結果が得られたことから、宇宙が始まったときに物質と反物質が同じだけ作られたはずなのに、現在では反物質がほとんど見られないのは何故か、という宇宙物理学、素粒子物理学上の大きな謎に対し、T2K実験をスケールアップすることでその答えに迫ることができると考えられ、スーパーカミオカンデの次世代検出器の議論が大きく進み始めた。本研究で得られた水チェレンコフ検出器を高い性能で安定に運用する手法、知見、経験は次世代検出器の設計段階から生かすことができており、次世代検出器の実現に向けて大きく役立っていると言える。
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