研究課題/領域番号 |
23340063
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮田 等 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80192368)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原子炉 / ニュートリノ / プラスチックシンチレータ |
研究概要 |
本研究は原子炉建屋内で安全に使うことができる固体原子炉ニュートリノ検出器について、原子炉燃料中のプルトニウム量を10%の精度でモニターできるシステムの開発を目指している。現在、開発している安価な新型プラスチックシンチレータについて、日本企業の協力のもとに、Gd入りシンチレータ板やシンチレータブロックを製作し、その性能評価を行った。 製作されたシンチレータ板について、β線源を用いて、その発光量や光の減衰長の測定を行った。また、Gd入りシンチレータブロックに光電子増倍管を取り付けて、ニュートリノ検出器とした。Gdは中性子に対する吸収断面積が非常に大きく、ニュートリノの逆β崩壊反応によって生じた中性子を捕獲して、合計8MeVのガンマ線を数個放出する。よってGd入りシンチレータは、原子炉ニュートリノの検出に適している。 本研究ではニュートリノの代わりに、中性子線源であるAm(241)/Be を用いて、擬似的なニュートリノ事象の測定を行った。実際のニュートリノを測定する場合と同様に、先発信号と後発信号の同期をとる遅延同時計数法を用いて測定した。 また、実験データとGeant4を用いたモンテカルロ・シミュレーションにおける平均中性子捕獲時間を比較した。Gd入りシンチレータブロック検出器について、実験データの平均中性子捕獲時間は21±2μsec 、この検出器のシミュレーションでの値は17±1μsec と求められ、実験データとほぼ一致し、中性子を検出できていることがわかった。 しかし、現在Gd入り新型プラスチックシンチレータの光量は、Gdを含まないものの半分程度であり、検出器のエネルギー分解能を良くするためにも、より発光量が多いシンチレータの開発が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型プラスチックシンチレータの開発によって、原子炉ニュートリノモニターを低コスト化できる可能性が出てきたことは、今後の原子炉プルトニウムモニターの開発にとって大きな進歩である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、国内の商業用原子炉はほとんど稼働していないので、原子炉建屋内で実際に実験することを考えるよりも、新型プラスチックシンチレータの開発を優先し、安価で大型のGd入りプラスチックシンチレータ検出器を作れるようにすることの方が重要であると考えた。 この新型検出器を用いたニュートリノ検出実験については、中性子線源であるAm(241)/Beを用いた擬似ニュートリノ事象の測定で代用することができる。この測定結果とGeant4シミュレーションによって、原子炉プルトニウムモニターの性能を評価する。
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