研究課題/領域番号 |
23340064
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿部 文雄 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80184224)
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研究分担者 |
米原 厚憲 京都産業大学, 理学部, 准教授 (10454472)
栗田 光樹夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20419427)
内藤 博之 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (30547550)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 光学赤外線天文学 / 重力レンズ / 太陽系外惑星 |
研究概要 |
本研究は、ニュージーランド・マウントジョン天文台の61cm望遠鏡、京都産業大学の1.3m望遠鏡、南アフリカ天文台の1.4m赤外望遠鏡をはじめ、世界各国の望遠鏡によるマイクロレンズ事象追観測により、太陽系外惑星を発見して惑星形成理論の検証を行うことを目的としている。観測手法はほぼ確立しており、惑星による変位(アノーマリー)が観測された事象や、惑星発見の可能性の高い高増光率の事象のピーク付近を重点的に観測を行った。OGLEグループが広視野カメラを設置して事象の発見数が増えたことと、観測手法の改善により、惑星候補の発見数も従来の年2、3個程度から10個程度に増えるなどかなりの進展があった。 今後、ニュージーランドへの観測旅費等の経費を節約しながら観測を継続するため、現地観測員を新たに雇用する準備を進めた。また、老朽化したニュージーランドの61cm望遠鏡のコントロールシステムを新しいものに更新した。これにより、長期にわたって観測を継続することが可能となった。また、61cm望遠鏡に3色同時観測可能な新カメラを設置すべく、準備を進めた。これにより、実質3倍の観測が可能となる。 データ解析も順調に進みつつある。OGLE-2011-BLG-0251, MOA-2010-BLG-311, OGLE-2012-BLG-0358, MOA-2010-BLG-328, OGLE-2012-BLG-0406, MOA-2011-BLG-322などに惑星ないし惑星候補が発見され、論文を公表した。また、解析の進行状況や新しい解析アルゴリズムの開発などの進行状況を2014年1月にサンタバーバラで行われたマイクロレンズ国際会議や日本天文学会などで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ニュージーランド・マウントジョン天文台の61cm望遠鏡、南アフリカ天文台の1.4m赤外望遠鏡、京都産業大学の1.3m望遠鏡をはじめとする、世界的なマイクロレンズ追尾観測網による重力マイクロレンズ事象の追尾観測を実施して、太陽系外惑星を多数発見することにより惑星形成モデルを検証することにある。 今年度も引き続き惑星によると思われる変位(アノーマリー)が観測された事象や、惑星発見の可能性の高い高増光率の事象を中心に集中的な観測を実施した。これまでに、今シーズン中に発見された668個のマイクロレンズ事象の中から約10個の惑星候補が発見され、詳細な解析が行われている。観測技術の向上に伴い、毎年2-3個だった発見数は10個程度に増えた。また、過去の惑星候補事象の解析も進み、6個の惑星を発見し公表した。また、複数の惑星がある事象を解析するための新しいアルゴリズムの開発を試みた。今後、実用的な解析プログラムの開発を目指す。これらの成果は、マイクロレンズ国際会議や天文学会などの会合の他、学術雑誌に論文として公表している。 今年度は、老朽化したマウントジョン天文台の61cm望遠鏡のコントロールシステムの更新と、この望遠鏡に取付ける新しいカメラの製作を別予算で実施した。新しいコントロールシステムは順調に稼働しており、今後長期間に渡って観測を継続する見通しがたった。新カメラは、2-3色を同時に観測できるものであり、実質的に望遠鏡が2-3台に増えた様なデータをとることができる。新カメラは平成26年度に設置して観測を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、これらの望遠鏡を使った追観測を行う。また、観測の効率化などを進めてより多くの惑星を発見する様に努める。このために、61cm望遠鏡のカメラを新しいものに置き換える。新カメラは2-3色同時に観測できることから、事実上2-3台の望遠鏡で同一事象を集中観測したのと同じ効果がある。また、オートガイダーも取付けたので、より長時間露出が可能となり、従来より暗い事象の観測が可能となる。また、測光精度の向上が期待できる。 また、多重レンズ解析の改良にも取り組みたい。従来、2重レンズ(主星1個+惑星1個)の場合は確立した手法がある。しかし、主星が連星の場合や惑星が複数の場合の確立した手法はまだ無い。これまでに、像の1次近似解から精密な位置を求めるアルゴリズムがわかった。これを全領域に広げ、すべての解を求める必要がある。この手法を確立すれば、あとは解析プログラムに組み込めば良い。おそらく、解析の高速化も可能と思われる。従来解析に時間がかかりすぎ、観測後発見を公表するまでに1-2年以上かかるのが普通だったが、計算機の増強とアルゴリズムの改良で短縮する様にしたい。 惑星の発見数の増加に伴い、惑星形成理論との比較が重要となる。これには、理論の側での努力も必要となるので、今後働きかけを強めたい。
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