ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊は、ニュートリノがマヨラナ粒子であることを実証するものであり、素粒子物理学および宇宙論において非常に大きな意味を持つ。テルル化カドミウム(CdTe)を用いた半導体検出器は、116Cdなど二重ベータ崩壊探索に有望な 原子核を含むため探索の有力な検出器となり得る。しかし、CdTe結晶は、正孔の移動度が小さく再捕獲が顕著なため、厚くするとエネルギー分解能が悪くなるという欠点を持っている。そのような欠点を克服し、CdTeを用いた高いエネルギー分解能を持つ大型の検出器 の開発に成功すれば二重ベータ崩壊探索の有望な検出器となる。 本年度は、15mmx15mmx10mm(厚さ)にCdTe素子を用いて長期安定性の評価を行った。ガンマ線源を用いてエネルギー分解能を評価した所、数か月に渡る断続的な測定ではエネルギー分解能の劣化は観測されず、安定した測定が可能であった。 また、二重ベータ崩壊探索において背景事象となる外部からの環境放射線を除去するための希ガス検出器の開発も進めた。希ガス内でガンマ線やアルファ線がエネルギー損失した際の電離電子を電場で加速して2次シンチレーション光を発生させ、マルチピクセル光検出器で観測することに成功した。これにより、環境放射線を有効に除去できると考えられる。 ソフトウエアとしては、二重ベータ崩壊事象や背景事象のシミュレーションコードを開発した。
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