研究課題/領域番号 |
23340067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國廣 悌二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20153314)
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研究分担者 |
日高 義将 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (00425604)
大西 明 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (70250412)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | クォーク・グルーオンプラズマ / エントロピー生成 / 古典ヤン・ミルズ方程式 / 南部-ゴールドストーンの定理 / グラズマ / 相対論的流体方程式 / 射影演算子法 / 超ソフトフェルミオン励起 |
研究概要 |
1)いわゆる2次の流体方程式の新しい形を非相対論および相対論の両者について提案した。これはよく知られた微視的導出法であるGradのモーメント法の不十分な点を改善したものであり、輸送係数の正しい微視的公式だけでなく、2次の方程式特有の緩和時間や緩和長の微視的公式を与えた。 2)相対論的流体方程式のフレームはエネルギーフレームにユニークに限られることを a)線型領域については森の射影演算子法で一般的に、またb)非線型領域においてはボルツマン方程式にくりこみ群法を適切に適用することにより仮定なしで、世界で初めて示した。 3)非平衡系の基礎理論である森の射影演算司法を用いて、非相対論的系および有限温度系における南部-ゴールドストーンモードの数と分差関係の運動量指数の関係についての一般的な関係式を証明した。 4)ファインマンダイアグラムの解析によって我々が先駆的に示していたゲージ理論で記述される超高温の系における新奇の超ソフトなフェルミオンモードの存在とそのスペクトルの性質について、Kadanoff-Baym形式により基礎付けを行った。 5) Glasma的状態から出発した古典YM方程式の解析によるエントロピー生成機構の解明を行った。すなわち、重イオン衝突の現実的な初期条件から出発して古典ヤン・ミルズ方程式を解き、その解からリャプーノフ指数を計算し、コルモゴロフ-シナイ(KS)エントロピー(エントロピー生成率)を計算した。Glasmaに微小だが有限のランダムな揺らぎが付加されていれば、系は不安定性を示し、十分時間がたった後もKSエントロピーは有意な正の値を取ることが分かった。この結果は、古典場レベルのダイナミクスでも、すなわち、量子的な場から粒子への転移がなくても、大きいエントロピー生成が起こりうることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) これまで曖昧であった、散逸を含む相対論的流体方程式を定義する「フレーム」はエネルギーフレーム(ランダウフレーム)が一意的かつ適切であることを世界で初めて提起し、明快に示した。 また、 2) そこでも用いられた森の射影演算子法を場の理論に初めて適用することにより、非相対論的系および有限温度系における独立な南部-ゴールドストーンモードの数とその分散関係における運動量の指数の関係を一般的に証明することに成功した。これは世界で最も権威ある雑誌の一つであるPhysical Review Lettersに掲載された。 3) 古典ヤン・ミルズ方程式の解析によるエントロピー生成の研究は数値シミュレーションの結果がまとまり、米国およびドイツの研究者を含む国際的共同研究として論文投稿を行った。 4) 超高温度でのフェルミオンの超ソフトなモードの理論は宇宙初期におけるニュートリノのスペクトルに関する新奇の振る舞いの提案として展開され、仕事がまとまりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
雇用しているポスドクによる数値シミュレーションを今まで以上に効率よく進める、結果が出次第即座に論文執筆に移れる体制を準備する。懸案であった、相対論的流体方程式のフレームの一意性に関する論文が掲載決定となったので、くりこみ群法に基づく研究による成果を論文にしていく。 赤外の有効ダイナミクスを構成する強力な方法としての森の射影演算子法を場の理論における広範な問題に適用して、運動論的方程式あるいは流体方程式を導出していく。
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