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2012 年度 実績報告書

第3世代クォークを用いた最高エネルギー実験での新現象探索とシリコン検出器開発

研究課題

研究課題/領域番号 23340070
研究機関大阪大学

研究代表者

花垣 和則  大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40448072)

研究分担者 波場 直之  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00293803)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワードトップクォーク / ボトムクォーク / ヒッグス / 湯川結合 / LHC / シリコン検出器 / MPPC
研究概要

主要テーマであるヒッグスがボトムクォーク対へ崩壊する事象探索については,発見感度がいまのところ標準模型の予言するヒッグス粒子生成断面積とほぼ同じであり,信号を有意に観測するにはよりデータ量を増やす必要がある。標準模型からのズレを精査するには,より多くのデータ量と,そのための加速器アップグレードに伴う検出器のアップグレードが不可欠である。特に,荷電粒子飛跡検出器は2022年をメドに完全に新しい検出器に置き換える予定で,そのためのシリコン検出器開発を推進した。
1) シリコンピクセル検出器試作品からの信号を読み出すためのデータ収集システムおよび試験システムの構築。信号読み出し用ICからの信号読み出しを行い,さらに,ICおよびピクセルセンサーを試験するために必要な様々な機能を実装した。
2) センサー試験時には,センサーに入射した粒子の位置を10μm以下という非常に高い精度で特定する必要がある。その要請を満たすためにADCを実装しているSVX4というICを用いて,飛跡検出器の開発に着手した。SVX4からの信号読み出し用基板を製作し,SVX4の制御に成功した。
3) 上記と同様にセンサー試験時にはファイバートラッカーも使用する予定である。このために使うMPPCからの信号読み出し用の電子回路基板を開発、製作した。
理論的研究の進捗:3世代の構造や起源の研究には、クォークと同時にレプトンの世代構造にも着目する必要がある。そこで、まず、クォークとレプトンが大統一理論では統一されることをふまえて、クォークとレプトンの世代構造が高エネルギー・スケールでは統一される可能性に関して解析をおこなった。その結果、クォークとレプトンの世代構造が、WeakスケールやTeVスケールで異なる構造を持つのは、ニュートリノの質量が縮退して量子効果が大きく効くためである可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LHCは安定して高いルミノシティを供給し,2012年度の運転を終えた。データ解析は得られたデータを有効に活用し,当初考えられていたよりも早くヒッグスに関する成果を出した。これは,統計的な幸運さによるところもあるのだが,その幸運さがなかったH→bb探索は,当初予定されていた通りの解析進行状況となっている。
シリコンピクセル検出器用データ収集システムおよび試験システムの開発状況は当初の予定通りであった一方,センサー試験時の入射位置測定用検出器開発と,MPPCからの信号読み出し基板開発は当初の想定をかなり上回る速度で進んだ。SVX4の信号制御は非常に複雑かつデリケートなので,今年度中に信号を読み出せれば十分と当初は考えていたが,IC単体での信号読み出しに成功したばかりでなく,複数のICからの信号読み出しに成功し,センサーをつければ実機に限りなく近づくという段階にまで研究が進んだ。また,MPPCからの信号読み出し基板開発も,当初は,今年度内に仕様を決定し,パーツの試験と選別ができればよいと考えていたが,予想に反して試作機第一号を完成させることができた。これらの両研究に関しては,研究に直接関与した修士課程学生の頑張りが大きい。

今後の研究の推進方策

全体の方針に変更はない。今年度はLHCは運転がないので,これまでに収集したデータの解析とアップグレード用シリコン検出器の開発に注力する。
物理解析においては,これまでは感度の低さからあまり本格的に解析が行われていないヒッグス生成・崩壊チャンネルの感度調査などを行い,わずかでも感度を改善する方法がないか調べる。
シリコン検出器開発においては,ピクセル検出器ではこれまで1つのICからしか信号を読み出せていなかったが,4つのICから並行して信号を読み出せるべくシステムを拡張する。予定される実機では4つのICからの並行に信号を読み出すので,この手法の確立は急務である。また,センサー試験時に入射位置を特定するための検出器開発においては,センサーまで取り付けて実機を年度内に完成させる。MPPCからの信号読み出し基板については,まずは試験を行い,必要があれば試作機第2号を製作する。それと並行して,ファイバートラッカー本体も今年度中に製作する。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Enhancement of Higgs to diphoton decay width in non-perturbative Higgs model2013

    • 著者名/発表者名
      N. Haba, K. Kaneta, Y. Mimura and R. Takahashi
    • 雑誌名

      Phys. Lett. B

      巻: 718 ページ: 1441-1446

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2012.12.049

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stability of Leptonic Self-complementarity2013

    • 著者名/発表者名
      N. Haba, K. Kaneta and R. Takahashi
    • 雑誌名

      Europhys. Lett.

      巻: 101 ページ: 11001-1 - 5

    • DOI

      10.1209/0295-5075/101/11001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A particle consistent with the Higgs Boson observed with the ATLAS Detector at the Large Hadron Collider2012

    • 著者名/発表者名
      ATLAS Collaboration (G.Aad, K.Hanagaki et al.)
    • 雑誌名

      Science

      巻: 338 ページ: 1576-1582

    • DOI

      10.1126/science.1232005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Observation of a new particle in the search for the Standard Model Higgs boson with the ATLAS detector at the LHC2012

    • 著者名/発表者名
      ATLAS Collaboration (G.Aad, K.Hanagaki et al.)
    • 雑誌名

      Phys. Lett. B

      巻: 716 ページ: 1-29

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2012.08.020

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Search for the Standard Model Higgs boson produced in association with a vector boson and decaying to a b-quark pair with the ATLAS detector2012

    • 著者名/発表者名
      ATLAS Collaboration (G.Aad, K.Hanagaki et al.)
    • 雑誌名

      Phys. Lett. B

      巻: 718 ページ: 369-390

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2012.10.061

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Measurement of the cross section for top-quark pair produced in pp collisions at sqrt(s)=7TeV with the ATLAS detector using final states with two high-pt leptons2012

    • 著者名/発表者名
      ATLAS Collaboration (G.Aad, K.Hanagaki et al.)
    • 雑誌名

      JHEP

      巻: 1205 ページ: 059

    • DOI

      10.1007/JHEP05(2012)059

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Parity Violation in QCD Process2012

    • 著者名/発表者名
      N. Haba, K. Kaneta, S. Matsumoto, T. Nabeshima and S. Tsuno
    • 雑誌名

      Phys. Rev. D

      巻: 85 ページ: 14007-1 - 7

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.85.014007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phenomenology of supersymmetry SU(5) GUT with neutrinophilic Higgs boson,2012

    • 著者名/発表者名
      N. Haba, K. Kaneta and Y. Shimizu
    • 雑誌名

      Phys. Rev. D

      巻: 86 ページ: 015019-1 - 8

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.86.015019

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Grand Unification of Flavor Mixings2012

    • 著者名/発表者名
      N. Haba and R. Takahashi
    • 雑誌名

      Europhys. Lett.

      巻: 100 ページ: 31001-1 - 5

    • DOI

      10.1209/0295-5075/100/31001

    • 査読あり
  • [学会発表] Why is TeV-scale a geometric mean of neutrino mass and GUT-scale?2012

    • 著者名/発表者名
      N. Haba
    • 学会等名
      BENE-2212
    • 発表場所
      ICTP (Trieste)
    • 年月日
      20120917-20120921
    • 招待講演
  • [学会発表] ATLAS実験アップグレード用シリコン検出器試験のためのテレスコープDAQ開発

    • 著者名/発表者名
      東野聡
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
  • [学会発表] Development of SiTCP Based Readout System for Pixel Detector Upgrade in ATLAS Experiment

    • 著者名/発表者名
      Jia Jian Teoh
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
  • [学会発表] LHCにおけるヒッグス研究の展望

    • 著者名/発表者名
      花垣和則
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 招待講演
  • [学会発表] ATLAS 実験における dilepton 終状態及び b-tagging を用いた top quark 対生成断面積測定

    • 著者名/発表者名
      廣瀬穣
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験における VBF H→WW→lνlν を用いたヒッグス粒子の探索

    • 著者名/発表者名
      岡村航
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
  • [学会発表] ATLAS実験アップグレード用シリコン検出器試験のためのテレスコープ検出器開発

    • 著者名/発表者名
      東野聡
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [学会発表] 30ATLAS実験シリコンストリップ検出器の性能評価

    • 著者名/発表者名
      遠藤理樹
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [学会発表] Development of SiTCP Based Readout System for Pixel Detector Upgrade in ATLAS Experiment

    • 著者名/発表者名
      Jia Jian Teoh
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [学会発表] MPPC読み出しのための汎用モジュールの開発

    • 著者名/発表者名
      石島直樹
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [図書] ヒッグス粒子の見つけ方2012

    • 著者名/発表者名
      戸本誠,花垣和則,山崎祐司
    • 総ページ数
      136
    • 出版者
      丸善出版
  • [備考] 一般向け講演会等の記録

    • URL

      http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/atlas/outreach.php?language=japanese

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公開日: 2014-07-24  

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